彫刻ボランティア活動報告

彫刻あらいぐま参上!《ゆあみ》を洗う

2014年11月16日(日)、秋晴れの北浦和公園。今日は月例の彫刻ボランティア活動日でした。今日はボランティア7名と職員2名で、北浦和公園の入り口にある野外彫刻、エミリオ・グレコ《ゆあみ》をお手入れしました。

彫刻あらいぐま参上!

洗浄して、ワックスを塗って、ひたすら磨く、という単純だけど根気のいる作業です。また、脚立に上ると、下から見るよりも結構高く感じます。

脚立の上でワックスを塗っています

13時半から15時半まで、じっくり2時間の作業のおかげで、彫刻に輝きが戻りました。

彫刻あらいぐま またまたまた×2参上!

北浦和公園

リポーター : S.N.

2012年10月21日(日)、前日までの雨が嘘のような晴天のもと、彫刻あらいぐま第7回目のイベントが開催されました。
本イベントは、親子で北浦和公園内の野外彫刻のメンテナンス体験を楽しんでいただくための企画で、私たち、埼玉県立近代美術館ボランティア・チーム彫刻あらいぐまが主催しています。
今回参加していただいたのは、近郊にお住まいの親子8組です。

13:00
まずは美術館内の講座室にて、私たち彫刻あらいぐまの活動や、今回メンテナンス作業を行う彫刻についての紹介を含めたワークショップを行います。
参加者の皆さんは、少しだけ緊張気味ですが、これから初めて体験することへの期待に目が輝いています。
13:30
早速皆で野外へ移動します。
じつは北浦和公園内には、現在全部で21もの野外彫刻作品があります。
先日埼玉新聞の第1面に掲載された「みんなで選ぶMOMASコレクション ベスト10」で見事第1位に輝いた、音楽噴水の中にたたずむサキソフォン、西野康造さんの《風の中で》をはじめとして、美術館壁面と一体化した、田中米吉さんの《ドッキング(表面)No.86-1985》などがあります。これらをより深く知っていただくために、今回は中庭に位置している作品群をみんなで鑑賞しながら、4作品についてクイズ形式のイベントを行いました。

14:00
今回洗浄体験するのは、フェルナンド・ボテロ作《横たわる人物》と、橋本真之さん作《果実の中の木もれ陽》の2点です。
じっくりと作品と向き合っていただくため、2つのグループに分かれてメンテナンスに取り組みました。
まずは橋本真之さん作《果実の中の木もれ陽》のメンテナンスを。
こちらは、先述のランキングで21位となった作品です。
植え込みの中で木々に囲まれて静かにたたずむ姿が素敵な作品ですが、逆に、枝や葉っぱが作品の中に入ってしまったり、木で休憩した鳥の害を受けてしまったりすることが多いため、定期的な洗浄が必要な作品です。
素材はすべて銅で出来ているため、高圧洗浄器で全体を濡らしてから、中性洗剤を薄めた洗浄液で、スポンジを用いて汚れを落としていきます。
銅特有のひんやりとした触感を楽しみながら、洗剤をたっぷりつけて磨くと、汚れが落ちて、気分もすっきりします。親子で「そっちはどう?」などと声を掛け合いながら、和気あいあいと作業に取り組む姿が見受けられました。
最後はまた高圧洗浄器で洗剤を洗い落としてメンテナンス完了です。

続いて、フェルナンド・ボテロ作《横たわる人物》。
同じくランキングで、橋本さんの作品に次ぐ22位となった作品です。美術館入口付近に位置しているため、注目度も高い作品です。
こちらについては、既にボランティアメンバーが洗浄を終えておいたので、ワックスがけの作業を体験します。
ブロンズでできたこの彫刻は、ワックスで磨けば磨くほどつやつやと光って大変美しくなりますが、逆に、この過程を美しく仕上げないと作品の見た目に影響を及ぼしてしまうため、ワックスがけは重要な作業です。
蜜蝋にリグロインという溶剤を加えて薄めたものを、ちょっとドキドキしながら刷毛でぬっていきます。皆さん慎重に作業を進めますが、初めてのため「どうしても厚く塗り過ぎてしまう…」との声には、あらいぐまメンバーがコツを伝授しながら作業を進めました。
ワックスを塗り終えてからウエスで磨くと、次第にツヤが出てきました。比較的力と根気のいる作業ですが、5歳のお子様から皆さん、もくもくと作業に取り組みます。
後半は、2つのグループを入れ替えて体験しました。

15:00
約1時間のメンテナンス体験を終えて、講座室にて修了式を行いました。
参加者の皆さんには「楽しかった」「貴重な体験が出来た」「もっと他の作品も洗ってみたい」といった、うれしいお声をいただくことができ、私たちあらいぐまメンバーにとっても、貴重な1日となりました。

解散後、夕暮れ始めた光の中で、《横たわる人物》も《果実の中の木もれ陽》も、いつもよりも美しく、キラキラと輝いていました。
今回ご参加いただいた8組の皆様、本当にありがとうございました。
また来年、たくさんの方に参加していただけるのを楽しみにお待ちしています。

「GTS観光アートプロジェクト」

夏期研修会 「藝大・台東・墨田 GTS観光アートプロジェクト」を歩く
東京都台東区・墨田区

リポーター : H.K.

平成24年8月26日(日)、今最も注目されているスカイツリー周辺の散策へ。今回は、新たに彫刻ボランティアに加わった7期生4名を含めた総勢9名の見学研修会となりました。
近年、スカイツリー建設に伴い浅草界隈まで含めたエリアにて、3者地域連携プロジェクト(隅田川西側浅草を有する台東区、東側スカイツリーを有する墨田区、東京藝術大学の3者)によるパブリックアートが配置されています。
さて、晴天の14:00、駅を降りると去年の館林に匹敵する?いや、コンクリートだらけなので、それ以上の唸る暑さと人、人、人。業平橋駅時代からは想像できないほどの人の多さに、観光スポットになったのか〜と少し唖然としました。

最初は、駅西側道路を挟んだ児童公園の一角に設置された161本のポールのオブジェ《おぼろげ》。スカイツリーをバックに、ポールにより下層部分が見え隠れとなりスカイツリーがダイレクトになることを意図しているようです。個人的には、竹林をヒントにされているならば、日本的に木製(竹)がよかったかな〜と思いましたが、維持管理が大変でしょうか。

次は、船舶先端のモチーフが目に留まる大横川親水園内に設置されているオブジェ《Reflectscape》、度々TVでも紹介される凸面鏡を利用した個人記念撮影スポットです。
さすがにこのスポットは、人気があり我々以外にも観光客が訪れていました。見てもらって、触ってもらって、遊んでもらってのパブリックアート、そこにコミュニケーションが発生する。・・・・このオブジェはまさにパブリックアートのエリートですね。(まあ、マスコミの力もあると思いますが)

 その後も炎天下の中、学芸員の方のベストな誘導により最善日陰ルートを歩きます。

□墨田区側
・墨田区役所付近の交差点歩道に設置されたトーチの様なオブジェ《ゆらぎツリー》。
・ふれあい広場には、木製のかごの様なオブジェ《スカルプチャーツリー》干支の木彫が所狭しと据え付けてあります。

□台東区側
・隅田川公園内には、パノラマアンテナの様なオブジェ《グリーンプラネット》。穴があいており表面には、所狭しと草花が植えてあります。しかしながら少し荒らされたような痕跡が!・・・・・近所の方の話だと、酔っぱらいや子どもが中に入り遊んでしまうとの事。・・・子供はまだしも、酔っぱらい(大人)は節度を考えてもらいたいです。花火、花見の名所なので仕方ない、では許されません。

・休憩ベンチと筒型望遠鏡が隣接する《LOOK》。ただ筒という発想はおもしろいとは思うのですが、ほとんどボケて見えないし目の前が隅田川で開けているため、普通にツリーが拝めてしまう?・・・・・

そして最後に、
・旧小学校跡地の公園に石の塊を設置した《石の舟》。
地元児童の作品らしきブロンズ作品が所狭しと埋め込まれています。地域との共同作品は数ありますが、児童個人の作品が公共の場に設置されるなんて自慢話になると同時に5年、10年、20年後に想い出がよみがえりますね。

今回見た作品は、発想がすばらしい作品もありましたが、この場所にこの作品!という理由がイマイチのものもありました。ただ、地域環境をより良いものへ!というこうしたプロジェクトは、地域の津々浦々にも広がってほしい活動です。

炎天下の中、歩き疲れた私たちは、当然のごとく、浅草の名店「神谷バー」にて残暑払い?を決行と相成りました。これが、本来の目的かと思うほどの宴会でした。



















朝倉彫塑館収蔵庫訪問

朝倉彫塑館

リポーター : Y.T.

 今回の研修は、朝倉彫塑館収蔵庫にご縁があり、伺いました。

 当日、日暮里駅に集合し、生地問屋さんや小学校、民家などが立ち並ぶ、東京といってもとても静寂な下町の道を歩くこと20分…。大通りを少し入ったところに収蔵庫はありました。建物を見た瞬間、一つ驚いたことが…、当時「朝倉文夫さんに、作品を作ってもらうのは、ステイタス中のステイタス!」というほど、実力も評価も高い作家の「朝倉文夫さんの作品が、ココにあります。」と、言わんばかりに、建物に「朝倉彫塑館収蔵庫」と、書いてあります。大事な作品たちを、防犯上ひっそりと保管するのではなく、堂々と(!?)保管しているのがなんとも太っ腹で「さすが!大物!」と唸らせるものでした。(私だったら、気づかれないように、しまっておきます)

 収蔵庫の前で中へ声をかけようと待っていると、すこしふらつき、シャッターがガシャン、ガシャン…。「今日はスゴイ強風だ…」とのんきに思っていたら、みんな『地震だ…』と…。風じゃなかったのねっ!!少し心配していましたが、学芸員の村山万介さんが「休館で、たくさん作品が帰ってきているから散らかっていますが…」と、顔で迎えてくれました。早速中へお邪魔すると、1階に第1収蔵庫。ここは搬入出がしやすいように大物を保管しています。そのドアを開けてくださった瞬間…、薄暗がりから見える、大きな人!人!!人!!!「うわーっ!!コワイっ!!!」コレが、私の第一印象でした。だんだん気持ちが落ち着いたところで、よく見たり像と像の間にそっと入ってみたりすると、まるで自分が、こびとなったような気持ちです。見覚えのある顔がたくさん。そして石膏や胸像や足元だけの像も…。大きい像は組み立て式だそうです。運ぶのは大変だろうと気になっていると、「FRP素材のものは、2人でも運べる」とのこと。またブロンズは3mmまでと、薄さを競っていた時期もあり、日本の鋳造技術は高いとのこと…。まだまだ彫刻について知識の浅い私は、日本の技術の高さを全然知りませんでした。

 たくさんの驚きで心が忙しい中、大きなエレベーターに乗り2階へ。この収蔵庫は第5収蔵庫まであり、各フロアーが収蔵庫になっています。第2収蔵庫は60点ほどの全身像。第3収蔵庫は150点ほどの胸像・首像。第4収蔵庫は胸像など。朝倉文夫にデビューと同時に名声をも与えた大学の卒業制作の作品《進化》も…。第5収蔵庫は、旅(貸出)から帰ってきたばかりの晩年のシリーズ作品の《猫》たちが、38匹。小さい作品が収蔵されています。館内の空調は『乾燥』に設定。その理由は、針金や木で形を作り、滑り止めに棕櫚縄を巻きつけ、粘土で肉付けした型から取った石膏原型の中は角材と鉄をはっていて、角材が湿気を吸って膨張すると石膏を突き破ってしまうからだそう…。石膏ってそんなにデリケートなものだったとは…また石膏型はブロンズの着色をして展示をするそうなのですが、この着色が痛むのも理由の一つだそうです。鋳造にいたっては、現在、東京・金町と埼玉・川口の工場に依頼しており、年々少なくなっているそうです。朝倉彫塑館では、「作品」と「コピー」の区別という観点から、必ず鋳造年、鋳造者名を作品に入れています。基本的に石膏原型から鋳造できるのは3回までだそうで、痛みやすい石膏原型の状態を見ながら、作品を大切に残していくのです。

 また村山さんが各階でお話してくださる彫塑家・朝倉文夫の素顔が垣間見られるエピソードや、村山さんの朝倉作品への想いが感じられるトークがとても興味深いのです。2011年3月11日の東日本大震災の被害について。第3・4収蔵庫にある胸像・首像には、いまだに誰なのかわからない人が多いけれど、ご遺族からの依頼で判明することがあるほか、紳士録から、辿って行くことができるのではないか…、とか、38匹の帰ってきた《猫》たちを、説明してくださるのに、ひしめきあう《猫》たちの間をそっとつま先立ちで入り、手にとって説明してくださる仕草に朝倉作品に対しての村山さんの愛。朝倉文夫はドローイングやデッサンはせず、お弟子さん泣かせだったけれど、常に大好きな猫をひざに置き、撫でていたのは、猫の体を感覚で覚えていたのだろう…という作品製作過程での裏話。そして朝倉文夫は、肖像彫刻がステイタス・シンボルとなっていた時代とデビューする時代がマッチしたことで、名声を得、それを一言で、言い切る批評家が多いけれど、確かに、そうなんだけれど、本当は簡単に一言では言い切れないほどその裏づけが必ずある深い人であることを、顔をほころばせながらお話してくださった村山さんの作家・朝倉文夫への愛を強く感じました。

 現在、朝倉彫塑館は耐震補強と原型回帰改修のため2013年3月までの予定で休館していますが、朝倉文夫は自分で地下を掘って螺旋階段を作り、移動や大作の制作を容易にしたり、アトリエを制作のために改良したりしていたため、新しい発見がたくさんあるとのことで、休館がもう少し長引きそうだとのことです。まだ先ではありますが、再び開館した際には足を運ぼうと思います。

 今回の研修で、彫刻作品は実はたくさんの人の手に助けられ完成していることを知りました。そして作家自身がたくさんの人に愛されていてこそ、作品という形が成り立つのだと感じました。今後、彫刻作品を見た時にたくさんの想像が出来そうです。また彫刻ボランティアの活動でも、作品に関わってくださったたくさんの人の想いを汚さないよう、作品を良く知り、良い状態を維持できるようにしていきたいです。

*彫刻ボランティア担当学芸員より*
今回の研修会でお世話になりました朝倉彫塑館研究員・村山万介氏が3月にご逝去されました。朝倉文夫の芸術についてユーモアを交えてお話しくださった姿が忘れられず、突然の訃報に驚きを禁じ得ませんでした。彫刻ボランティア一同、心よりご冥福をお祈りしています。

彫刻あらいぐま、またまたまたまたまた参上!!!!!

埼玉県立近代美術館

リポーター : M.N.

 2011年であらいぐまワークショップは6回目を迎え、3組8名の親子の皆さんに参加していただきました。

 前日の強い雨が朝方まで残り、開催が心配されていた彫刻あらいぐまの日。重い雲は午前中にどこかへ消えてなくなり、午後にはすっかり晴れて洗浄日和となりました。

 洗浄方法についてまずは講座室にてスタッフから説明をしました。その後美術館から外に出たところで、洗浄にとりかかる前に公園内の野外クルーズに出ました。 

野外クルーズ
 参加者の皆さん全員で彫刻に親しみを持っていただけるようなクイズをしながら園内を回りました。フェルナンド・ボテロの《横たわる人物》ではその人物の髪型をあてるという問題。正面からだと意外に後ろまで気づかないですね。皆さんと後ろに回って答えを確かめました。山本信の《這うものたちの午後の眠り》にはたくさんのカラフルなタイルが使われています。いったい何色かな。答え合わせでは「あか、みどり、くろ、きいろ」とみんなで数えてみました。サトル・タカダの《子午線-1993》では彫刻の中に三角形がいくつ隠れているかなという問題。答えを聞くと「ええーっそんなに!?」。三角形はとても大事なのですね。最後は橋本真之の《果実の中の木もれ陽》。作品を遠くから見て、穴がいくつあるでしょうかという問題。答えは近寄ってみるとわかります。大きい穴もありますが、小さい穴がたくさん!ここから木もれ陽が射しこんだ時に中を覗くと、とても幻想的かもしれませんよ。
これから訪れる方もこのクイズに挑戦してみてはいかがでしょうか。

実際の洗浄(いよいよ本番)

《横たわる人物》フェルナンド・ボテロ
 参加者の皆さんにはワックス塗りと磨き上げをしていただきました。まるまると太った作風のブロンズ像をあらかじめスタッフが水と洗剤で洗浄しておきました。乾いた状態の像全体に、刷毛を使ってワックスを塗ります。ワックスはわりとすぐ乾くので、薄くむらなく塗るのにはある程度の塗るスピードも大切。皆さんも気を使って真剣に取り組まれていたようでした。そのあと布で全体をこすりますが、「磨き上げるのには結構力がいりますねぇ」の声があがりました。だんだんピカピカになってきて皆さん嬉しそうでした。

《果実の中の木もれ陽》橋本真之
 参加者の皆さんにはウォーターガンを使って洗浄をしていただきました。銅をハンマーで叩いて延ばしてかたちを整える鍛金という技法で造られ増殖・成長しているこの作品に、ウォーターガンで一人一人交代しながら水をかけました。水が強く噴き出すので初めはこわごわでしたが、皆さん上手く彫刻にあてることができました。そのあと洗剤とスポンジで汚れをおとします。くねくねとした彫刻を大人の方には上の方、子どもさんには下の手の届くところをまんべんなく洗っていただきました。皆さんは時々大きい穴から中を覗いたりしていました。最後にまた交代しながらウォーターガンで洗い流し終了です。

まとめ 
 講座室に戻り、皆さんに修了証、記念写真、おみやげにぶんぶんごまをプレゼントしました。人数は少なかったですが、その分よりフレンドリーに彫刻に触れていただけたかと思います。《横たわる人物》のワックスの磨き上げは仕上げをスタッフがしました。通りかかるおりには仕上がり具合もみていただければ幸いです。

群馬県立館林美術館を訪ねて

群馬県立館林美術館

リポーター : M.S.

 多々良駅を下車して出迎えていたのは狸の親子の置物でした。 20分ほど歩き、橋を渡ると群馬県立館林美術館の白く細長い平屋の建物が見えてきました。

 美術館の広くながらかな芝生には、彫刻のウサギが走っており、館内に入ると半円形のガラス張りの光の回廊が続きます。学芸員の松下様から、館林美術館は、まわりに畑や水田が広がって眺めの良い場所で、外の自然の空間と中の美術館がつながっていて、屋内展示物でありながら、外に開かれている等の説明を伺いました。 

 展示室では、フランソワ・ボンボンの彫刻(代表作はシロクマ)、ミロの鳥、バリー・フラナガンの仔象、ヘンリー・ムアの羊、その他を鑑賞しました。さらに、館林出身者藤巻義夫の生誕100年企画展では、昭和初期の上野や浅草などの、街並みを主題に木版画で表現した作品が多くあり、懐かしさを感じました。

 その後、林の中の渡り廊下を進むと、「彫刻家のアトリエ」がありました。このアトリエは、フランソワ・ボンボンの出身地、ブルゴーニュ地方のいなかの納屋を模した建物で、中にはボンボンのパリのアトリエが再現してあります。ポンポンが使用していた道具や写真、手紙など、制作のプロセスや時代背景について知ることのできる貴重な資料が展示してありました。

 最後に、地元の在野民俗学研究者、川島様の案内で、丘の上にある美術館から下って橋を渡ると、南側には江戸時代からの古い松林の保安林がありました。その中を彫刻の小径が約1km続いており、小径の両側に37体の彫刻が顔をのぞかせていました。多くの人に分かりやすいため、具象彫刻が多い様です。小径の彫刻すべてを鑑賞できなかったのは残念でしたが、北側の多々良沼を眺めて帰途につきました。当日は、青い空、白い雲、あふれる緑の中、すがすがしい1日でした。

彫刻あらいぐま、またまたまたまた参上!

埼玉県立近代美術館

 あらいぐまワークショップも、2010年で5回目を迎えました。今回は6組14名の親子の皆さんに参加して頂きました。

 最初に美術館講座室にて、彫刻の洗浄方法についてレクチャーがありました。その後、野外に移動して野外彫刻クルーズがスタート。フェルナンド・ポテロ『横たわる人物』、西野康造『風の中で』、山本信『這うものたちの午後の眠り』、サトル・タカダ『子午線-1993』、橋本真之『果実の中の木もれ陽』を、あらいぐまスタッフが素材や制作意図などについて解説しながら見学していきます。参加者の皆さんはとても興味津々な様子で、特に『子午線-1993』が描いた線の跡を見たときには「すごい!」という感嘆の声も上がっていました。

 彫刻クルーズの後はA班、B班に別れ、いよいよ彫刻洗浄を開始。今回は『横たわる人物』『果実の中の木もれ陽』を交互に洗浄しました。

 『横たわる人物』はブロンズ彫刻なので通常、水洗い、ワックスがけ、磨きあげという作業を行いますが、ワークショップではワックスがけと磨き上げを中心に行って頂きました。一組に一つワックスと刷毛を手渡し、全体にむらがないようにワックスを塗っていきます。今まで見るだけだった彫刻にワックスを塗るという作業はとても新鮮だったようで、皆さん熱心に作業を進めていました。ワックスがけの後に乾いた布でこすり磨き上げると、その部分がピカピカになったのを見て、皆さん満足そうでした。磨き上げはとても時間のかかる作業なので、最終的な仕上げはスタッフが行いました。

 『果実の中の木もれ陽』は、ウォーターガンによる水洗いとスポンジでの汚れ落としをして頂きました。ウォーターガンは大きな水鉄砲のようなものなので、子供たちに大人気。一人ずつ交代で担当してもらいましたが、とても楽しそうでした。十分に水がかかったら、スポンジで汚れを落とします。目に見えて汚れが落ちていくので、皆さん黙々と作業していました。叩いたり、穴の中をのぞいたりしてみる子供たちもいて、自分の楽しみ方で彫刻に触れ合えていたようです。最後にもう一度ウォーターガンで全体の汚れを洗い流し、作業終了です。

 約1時間の洗浄作業が終わると、講座室に移動。記念写真、修了証、おみやげとしてすりこぎトンボをプレゼントしました。すりこぎトンボは上手に回転させるためにはコツがいりますが、子供たちは簡単な説明で上手に回せるようになっていました。子供たちの飲み込みの早さは素晴らしいです。

 以上で約2時間半のワークショップが終了しました。アンケートには「楽しかった」「また来年も参加したい」などのコメントが多く、参加した皆さんに、とても喜んでもらえたようです。参加者の皆さんが美術館を出るときと、あらいぐまスタッフがワックスの磨き上げを終えるのがほぼ同じ時間だったので、ピカピカに磨きあがった『横たわる人物』をお見せすることが出来ました。「こんなに綺麗になるなんて、流石ですね」という褒め言葉で、私たちあらいぐまスタッフの疲れも吹き飛びました。







川越アート散策

川越駅西口広場 〜 川越市立美術館 〜 川越の町の彫刻めぐり(含小ギャラリー)
彫刻ボランティア見学研修会

リポーター : M.N.

 8月の晴れた暑い日の午後、美術館学芸員のお二人の案内で彫刻ボランティアの川越見学会がありました。川越は小江戸とも呼ばれ喜多院や本丸御殿など歴史的名所も多く、蔵造りの町並み、菓子屋横丁や川越まつり会館など、見どころ満載の町ですが、この日の見学はやはり彫刻の素材や状態なども気にしつつのアート中心の見学会となりました。

 まずJR川越駅から西口駅前の広場を訪れました。大きなくすの木のある広場には、若々しい女性が雁に手を伸ばす姿の中川敏之「初雁の像」、女性がゆったりと座る姿の三坂制「駘蕩」(たいとう)。地球の内部を連想するような球形をカットした形の田中毅「EARTH ’77」。田中毅の彫刻はこの後いくつか見ることができました。

 次は東口からバスに乗って川越市立美術館へ。美術館で出迎えてくれたのは柳宗理「道祖神」、橋本次郎「友好」など。周りにもいくつかの小彫刻が並んでいます。さて館内では竹久夢二展と常設展、金沢健一「音のかけら」とワークショップ展の見学をすることができました。 竹下夢二の肉筆画・版画・自著装丁本など静岡市美術館に所蔵される160点におよぶ志田コレクションで甘美な夢二芸術を楽しんだ後、常設展など鑑賞して、この日のもう一つの見どころ金沢健一の「音のかけら」に移りました。

 広いがらんとした会場に入ると床に丸い大きな円形が敷いてあるのが目に飛び込んできます。よく見るとさまざまな大きさと形に溶接した黒い鉄板のピースがジクソーパズルのように集合しているのでした。これだけでも美しい作品だと思いましたが、金沢氏はそれらをいろいろなもので触れることによって音を出します。たとえば、金属性のスティックみたいなもの、かたいボールのようなものなど。それらと鉄板が触れることによって思いがけない美しい音が出ます。金沢氏と複数の奏者による複合的な音と体に伝わる振動が重なる中で、私たちは心地よい不思議な世界へ誘われました。終わったあと、観客も自由に触って音を出すことができ、アートを体全体で感じ楽しむことができました。

 美術館の中には手袋をつけて彫刻を触ることができるタッチアートコーナーもありここには橋本次郎のいくつかの作品が展示してあります。目に障害のあるかたにも彫刻が楽しめ親しみがわく良い取りみだと感じました。

 その後、町のアート散策をしながらJR川越駅へ向かいました。川越高校の関根伸夫「川越高校門扉」、ひまわり幼稚園の神山喜代美「未来への輪」などを通り、図書館前の「ふれあいの像」、市営駐車場前にある「歌姫」など橋本次郎の彫刻も今回いくつも出会うことができました。稲荷小路にある小さな稲荷社のそばにひっそりと「おかわり」、うどん屋さんの前に「うんとんちゃん」、銀行前ポケットパークの植え込みの中に「贈り物」。いずれも田中毅ですが小さなかわいい動物系の彫刻がお茶碗を持っていたり、うどんを食べていたり、プレゼントをもっていたり、またこんなところに!と町の中の彫刻を探す楽しみも感じました。住宅街の中のぎゃらりーたまや、蔵造りの町並み沿いにあるお店の二階のギャラリーに寄ったり、昔懐かしい映画館「スカラ座」や「時の鐘」を眺めたり夕暮れまでわいわいと楽しく散策は続きました。

 川越にはアートマップに記載されているだけでも36もの野外彫刻やモニュメントがあります。ちなみに美術館やギャラリーは43か所、看板建築や洋風建築など時代を感じさせる建築なども14か所あります。この半日でたくさんの川越のアートを堪能させていただきましたが、それらが町全体に根付いていると感じました。まだまだ全部は見きれませんでしたので、また訪れて他のたくさんのアートと出合いたいと思いました。























川口アート散策

川口アートファクトリー 〜 masuii R.D.R 〜 川口アートギャラリー 〜 川口西公園
彫刻ボランティア特別研修会 

リポーター : K.K.

 2月の研修会はまだ寒い時期ということで、彫刻洗浄は行わずに県内のアート散策。場所は、川口元郷から川口駅周辺を選び、野外彫刻見聞、ギャラリーなどの探索を実施しました。

 埼玉高速鉄道「川口元郷駅」に集合し、まず向かったのは駅から北に5分ほどのロケーションにある「川口アートファクトリー」(KAF)。かつては鋳物の町として知られた川口市で、戦前は軍需工場、戦後は機械部品の鋳物工場として稼動してきました。かつて倉庫や作業場として使用されていた空間を、近年アーティストのアトリエ兼レジデンツとしてレンタル。また撮影や展示に利用できる空間も併設し、独自のアート発信基地としての一面を持つようになりました。
何人かのアーティストのアトリエと住居を見せていただきましたが、外観は普通の倉庫にしか見えないのに、一歩中に入るとまったく別世界のアート空間になっているギャップが斬新です。また、ひとりひとり工夫を凝らした内装も面白く、制作の現場を見せていただき感銘を受けました。

  義村京子さんは花や人物をモチーフに描いていますが、人物と宇宙を繋げる作風は時間と空間を超越した視点を感じ取れます。オーガ フミヒロさんは埼玉県の絵具メーカー「クサカベ」のアキーラという絵具を使うことで、新たな表現に挑戦しているようです。
ブロンズ彫刻を長年手がけてきた坂井公明さん。男性彫像を主に製作され、近年では動物像にも力を入れているとのことです。横瀬浦公園設置の「ルイス・フロイス像」は、写真の残っていないルイス・フロイスの姿を伝える像として認識されているとのこと。「ロダンなどの思想を受け継いでブロンズ制作の歴史をつないでいきたい」という言葉にはたいへんな重みを感じました。

  KAFを後にし、続いてはJR川口駅方面へ。六間道路から樹モール通りを散策すると、そこかしこに立体作品が設置されているのに気づきます。鋳物の技術はブロンズ作品の鋳造に大きな関係がありますが、こうして街角にいろいろなアートに触れ合える環境があるのは、伝統的な技術が現在に繋がっていることを感じさせてくれます。
鋳物工場の跡地に建設されたマンション「シティデュオタワー」にはいくつもの作品が飾られています。樹モールや裏手の公園には、金属製の「ドン・キホーテ像」をはじめとする大きな作品も目を惹きました。

  樹モールを抜けて市役所通りに入ると、「masuii R.D.R」があります。NPOとして設立されたこのギャラリーは、古い公団アパートを改装したスペースで、さまざまな企画展やワークショップが行われています。訪問時には、ホームレスの人々に焦点を当てた写真展が開催されていました。2階はショップとなっていて、陶器やガラスのうつわやアクセサリーなどが並べられています。

さらに足を伸ばして、旧サッポロビール工場跡地に建てられた川口市立アート・ギャラリー「アトリア」を訪問。アトリアは収蔵品を持たない美術施設で、ワークショップや展覧会を開催しています。訪問時には市内の高校のアート発表展示が行われていました。建物の床材には旧サッポロビール工場の土台松杭が使用されているそうです。学校や子供たちとのかかわりを重視した、地域密着のアート・スペースとしてすっかり定着しているように感じられました。
また、建物前スペースにKUMA作「SAILING TREE」という鉄のオブジェもありました。

さて、川口市内を2キロほどアート散策して最後のポイントは、西口にある「川口西公園」。ここは、平成8年に川口市が設けた「彫刻検討委員会」により選ばれた彫刻10数体が、散策路に沿って設置された、埼玉県内で有数のパブリック・アート・スペースです。
アトリア側から地下を通って西口に出、公園に入るとまず関井一夫「家族」を見ることができます。銅版による鍛金作品。続いて川口出身の2人の作家、長谷川善一のブロンズ「くろがね号のゆくえ2」、三井泉の石彫「AI間」。そして印象的な人物像のブロンズが3点、朝倉響子「ミッシェル」、佐藤忠良「裸のリン」、佐藤に師事した笹戸千津子「纏う女」が私たちを迎えてくれます。一部、破損や緑青の影響なども見て取れましたが、全体的に作品の状態はどれもそれほど悪くないように思えました。
具象の人物像の背後には、建畠覚造のステンレスによる「WAVING FIGURE」、オレグ・クドリャシォフの色彩豊かな「冬の祭典」といった抽象金属作品がバランスよく配されています。

さらに進むと、富田眞州「豊かな想い」、市村緑郎「風の交差点」というこれまた印象的な2点のブロンズがあります。富田作は抽象、市村作は具象ですが、いずれも人間と自然、時間と空間の一体化を全身で表現するような作品です。
その先は「川口総合文化センターLILIA」近くとなり、花壇のあるエリアとなりました。岸田克二「S-8-20 KAWAGUCHI」、堀内健二「青春」、クリス・バジロウ「川」といった、作家の想いのこもった作品が空間を彩っています。
最後の作品です。「花と彫刻の広場」にて花壇に囲まれ、見晴らしもよい場所に設置された船越保武「渚」。素晴らしく美しい、女性の立像です。しかし…
なぜこの彫刻だけなのかわかりませんが、鳥(おそらく鳩)による糞害がひどく、とても汚れていました。この公園は管理組織が年に1回は全体的なメインテナンスを行っているようですが、こうした汚れはボランティアでこまめにの洗浄できるようなが体制があればと切実に思いました。ほかの彫刻はそれほど汚れてはいないことから鑑みると、この作品だけがおそらく鳥の飛んできやすい位置にあるということだと思います。せっかくの素晴らしい作品、素晴らしい立地条件にあるのですから、なんとかしたいと考えました。

とても盛りだくさんな川口アート散策となりました。作家のアトリエ、ギャラリー、野外彫刻など、カテゴリーは違えど、私たち市民ボランティアが身近な後にどのように関わっていくとよいのかということについて、とても示唆に富んだ一日になったと思います。

彫刻あらいぐま、またまたまた参上!!!

埼玉県立近代美術館

 今回で第4回目となった親子あらいぐま。
 当日は心配していた雨も上がり、総勢7組15名の皆さんにお集まりいただきました。 もちろん皆さん「彫刻を洗うのは初めて」の方ばかり。
 まず、集合場所の教室で、洗浄する彫刻の紹介や、洗浄の方法について説明をします。 これで準備は万端。皆で野外に移動して、いよいよあらいぐまのはじまりです。今回は人数が多いので、A、B班の2班にわかれて活動します。

 A班はまず、美術館エントランス正面にあるフェルナンド・ボテロの『横たわる人物』にワックスがけ作業を行います。
 洗浄作業はあらいぐまスタッフがあらかじめ終えておいたので、作業を始めるのは、洗浄が終わり、像の表面の水気をふきとった後になります。
  ワックスがけに使うのは、蜜蝋にリグロインという溶剤を加えて薄めたものです。そのワックスを刷毛で像全体にむらなく塗布していきます。
 像全体に塗布し終えたら乾いた布でその上からこすり、光沢がでるまで磨き上げます。その際、ワックスのむらができているところなどは、スポンジにリグロインを浸み込ませて蝋を溶かしながら磨きます。ワックスのむらがなくなり、像全体に光沢が出てきたら完成です。

 一家族に一つワックスと刷毛を配ると、子供たちがワックスを塗り、お母さんたちがその修正をするという流れができました。
 刷毛を使ってワックスを塗っていく作業では、子供たちも手に蝋が付くことも気にしないで夢中です。でも、ワックスもすぐに固まったりしてしまって、ムラなく塗ることは少し難しい…。結構力の要る仕上げの磨きでは、お母さんとお父さんたちが大活躍です。
 ウエスなどで磨くのですが、つやが出るまで磨くのは大変な作業。そこで、大体の作業のあとの微調整については、あらいぐまスタッフが引き受けさせていただきました。
 屋外に曝され続けたブロンズ像は、土埃や大気中に含まれる油分の付着、腐食生成物(緑青)などによって像本来の姿が変わってしまうだけでなく、像を脆弱化させ、劣化する原因となります。 ワックスがけをすることにより、像全体に保護膜ができ、大気中の有害な要因からの保護効果が期待できます。 しかし、蜜蝋を使ったワックスは風雨により少しずつ減少するので、屋外設置の場合はメンテナンスが必要となるのです。

 一方のB班は、美術館カフェの横に位置している橋本真之さんの『果実の中の木もれ陽』を洗浄します。
 まず、洗浄のためにウォーターガンで全体を濡らします。子どもたちは大きな水鉄砲(?)に大喜び。扱いもなかなか上手です。 さて、十分に濡らしたので、いざ汚れを落としにかかりましょう!薄めた中性洗剤を霧吹きで吹き付けて、水で濡らしたスポンジとブラシでゴシゴシと洗います。
 週末の愛車洗浄で鍛えられたお父さんの腕はさすがで、大きなストロークでどんどん磨いていきます。この作品は木の下にあるため中々汚れが激しいのですが、いつもより多い人数でやっているので、キレイになるのがかなり早いです!

 子どもたちは背が低いので下の方を担当。私たちの高さからは見えないようなところまで真剣に磨きます。これぞ、子どもならではの視線ですね。 みんながスポンジを洗うバケツの中はすぐに真っ黒です。 さらに穴から一生懸命手を入れて裏側まで洗ってくれるお子さんもいて、嬉しい限りです。
 さぁそろそろいいかな?再びウォーターガンで洗剤と汚れを落とします。 とってもキレイになりました。洗い終わった彫刻は表面がピカピカして、気持ちよさそう!見ているこちらまで気持ちいいです!

後半は交替をして、A班が洗浄の残った部分を、B班がワックスがけの続きにチャレンジしました。 あらいぐま体験の1時間が過ぎるのはあっという間。作業が終わったら、教室に戻ってお楽しみの時間です。
 3択クイズでは、「ボテロがもっている果物はどれ?」「橋本さんの作品、穴は全部でいくつあったかな?」など、難しい問題にも皆さん高い正答率!素晴らしいです。
 最後の「あらいぐまはどうでしたか?」という設問では、選択肢の「つかれた」「たのしかった」「またやりたい」の全部に手をあげてくれる方も多く、あらいぐまスタッフ一同感動しました!皆さんぜひまたいらしてくださいね。 最後に、あらいぐま参加証、記念写真、スタッフお手製のブンブンこまのプレゼントの贈呈をして終了です。 皆さん、本当にお疲れ様でした。