彫刻ボランティア活動報告
彫刻あらいぐま参上!《ゆあみ》を洗う
2014年11月16日(日)、秋晴れの北浦和公園。今日は月例の彫刻ボランティア活動日でした。今日はボランティア7名と職員2名で、北浦和公園の入り口にある野外彫刻、エミリオ・グレコ《ゆあみ》をお手入れしました。
洗浄して、ワックスを塗って、ひたすら磨く、という単純だけど根気のいる作業です。また、脚立に上ると、下から見るよりも結構高く感じます。
13時半から15時半まで、じっくり2時間の作業のおかげで、彫刻に輝きが戻りました。
洗浄して、ワックスを塗って、ひたすら磨く、という単純だけど根気のいる作業です。また、脚立に上ると、下から見るよりも結構高く感じます。
13時半から15時半まで、じっくり2時間の作業のおかげで、彫刻に輝きが戻りました。
彫刻あらいぐま またまたまた×2参上!
北浦和公園
リポーター : S.N.
2012年10月21日(日)、前日までの雨が嘘のような晴天のもと、彫刻あらいぐま第7回目のイベントが開催されました。
本イベントは、親子で北浦和公園内の野外彫刻のメンテナンス体験を楽しんでいただくための企画で、私たち、埼玉県立近代美術館ボランティア・チーム彫刻あらいぐまが主催しています。
今回参加していただいたのは、近郊にお住まいの親子8組です。
13:00
まずは美術館内の講座室にて、私たち彫刻あらいぐまの活動や、今回メンテナンス作業を行う彫刻についての紹介を含めたワークショップを行います。
参加者の皆さんは、少しだけ緊張気味ですが、これから初めて体験することへの期待に目が輝いています。
13:30
早速皆で野外へ移動します。
じつは北浦和公園内には、現在全部で21もの野外彫刻作品があります。
先日埼玉新聞の第1面に掲載された「みんなで選ぶMOMASコレクション ベスト10」で見事第1位に輝いた、音楽噴水の中にたたずむサキソフォン、西野康造さんの《風の中で》をはじめとして、美術館壁面と一体化した、田中米吉さんの《ドッキング(表面)No.86-1985》などがあります。これらをより深く知っていただくために、今回は中庭に位置している作品群をみんなで鑑賞しながら、4作品についてクイズ形式のイベントを行いました。
14:00
今回洗浄体験するのは、フェルナンド・ボテロ作《横たわる人物》と、橋本真之さん作《果実の中の木もれ陽》の2点です。
じっくりと作品と向き合っていただくため、2つのグループに分かれてメンテナンスに取り組みました。
まずは橋本真之さん作《果実の中の木もれ陽》のメンテナンスを。
こちらは、先述のランキングで21位となった作品です。
植え込みの中で木々に囲まれて静かにたたずむ姿が素敵な作品ですが、逆に、枝や葉っぱが作品の中に入ってしまったり、木で休憩した鳥の害を受けてしまったりすることが多いため、定期的な洗浄が必要な作品です。
素材はすべて銅で出来ているため、高圧洗浄器で全体を濡らしてから、中性洗剤を薄めた洗浄液で、スポンジを用いて汚れを落としていきます。
銅特有のひんやりとした触感を楽しみながら、洗剤をたっぷりつけて磨くと、汚れが落ちて、気分もすっきりします。親子で「そっちはどう?」などと声を掛け合いながら、和気あいあいと作業に取り組む姿が見受けられました。
最後はまた高圧洗浄器で洗剤を洗い落としてメンテナンス完了です。
続いて、フェルナンド・ボテロ作《横たわる人物》。
同じくランキングで、橋本さんの作品に次ぐ22位となった作品です。美術館入口付近に位置しているため、注目度も高い作品です。
こちらについては、既にボランティアメンバーが洗浄を終えておいたので、ワックスがけの作業を体験します。
ブロンズでできたこの彫刻は、ワックスで磨けば磨くほどつやつやと光って大変美しくなりますが、逆に、この過程を美しく仕上げないと作品の見た目に影響を及ぼしてしまうため、ワックスがけは重要な作業です。
蜜蝋にリグロインという溶剤を加えて薄めたものを、ちょっとドキドキしながら刷毛でぬっていきます。皆さん慎重に作業を進めますが、初めてのため「どうしても厚く塗り過ぎてしまう…」との声には、あらいぐまメンバーがコツを伝授しながら作業を進めました。
ワックスを塗り終えてからウエスで磨くと、次第にツヤが出てきました。比較的力と根気のいる作業ですが、5歳のお子様から皆さん、もくもくと作業に取り組みます。
後半は、2つのグループを入れ替えて体験しました。
15:00
約1時間のメンテナンス体験を終えて、講座室にて修了式を行いました。
参加者の皆さんには「楽しかった」「貴重な体験が出来た」「もっと他の作品も洗ってみたい」といった、うれしいお声をいただくことができ、私たちあらいぐまメンバーにとっても、貴重な1日となりました。
解散後、夕暮れ始めた光の中で、《横たわる人物》も《果実の中の木もれ陽》も、いつもよりも美しく、キラキラと輝いていました。
今回ご参加いただいた8組の皆様、本当にありがとうございました。
また来年、たくさんの方に参加していただけるのを楽しみにお待ちしています。
「GTS観光アートプロジェクト」
夏期研修会 「藝大・台東・墨田 GTS観光アートプロジェクト」を歩く
東京都台東区・墨田区
リポーター : H.K.
平成24年8月26日(日)、今最も注目されているスカイツリー周辺の散策へ。今回は、新たに彫刻ボランティアに加わった7期生4名を含めた総勢9名の見学研修会となりました。
近年、スカイツリー建設に伴い浅草界隈まで含めたエリアにて、3者地域連携プロジェクト(隅田川西側浅草を有する台東区、東側スカイツリーを有する墨田区、東京藝術大学の3者)によるパブリックアートが配置されています。
さて、晴天の14:00、駅を降りると去年の館林に匹敵する?いや、コンクリートだらけなので、それ以上の唸る暑さと人、人、人。業平橋駅時代からは想像できないほどの人の多さに、観光スポットになったのか〜と少し唖然としました。
最初は、駅西側道路を挟んだ児童公園の一角に設置された161本のポールのオブジェ《おぼろげ》。スカイツリーをバックに、ポールにより下層部分が見え隠れとなりスカイツリーがダイレクトになることを意図しているようです。個人的には、竹林をヒントにされているならば、日本的に木製(竹)がよかったかな〜と思いましたが、維持管理が大変でしょうか。
次は、船舶先端のモチーフが目に留まる大横川親水園内に設置されているオブジェ《Reflectscape》、度々TVでも紹介される凸面鏡を利用した個人記念撮影スポットです。
さすがにこのスポットは、人気があり我々以外にも観光客が訪れていました。見てもらって、触ってもらって、遊んでもらってのパブリックアート、そこにコミュニケーションが発生する。・・・・このオブジェはまさにパブリックアートのエリートですね。(まあ、マスコミの力もあると思いますが)
その後も炎天下の中、学芸員の方のベストな誘導により最善日陰ルートを歩きます。
□墨田区側
・墨田区役所付近の交差点歩道に設置されたトーチの様なオブジェ《ゆらぎツリー》。
・ふれあい広場には、木製のかごの様なオブジェ《スカルプチャーツリー》干支の木彫が所狭しと据え付けてあります。
□台東区側
・隅田川公園内には、パノラマアンテナの様なオブジェ《グリーンプラネット》。穴があいており表面には、所狭しと草花が植えてあります。しかしながら少し荒らされたような痕跡が!・・・・・近所の方の話だと、酔っぱらいや子どもが中に入り遊んでしまうとの事。・・・子供はまだしも、酔っぱらい(大人)は節度を考えてもらいたいです。花火、花見の名所なので仕方ない、では許されません。
・休憩ベンチと筒型望遠鏡が隣接する《LOOK》。ただ筒という発想はおもしろいとは思うのですが、ほとんどボケて見えないし目の前が隅田川で開けているため、普通にツリーが拝めてしまう?・・・・・
そして最後に、
・旧小学校跡地の公園に石の塊を設置した《石の舟》。
地元児童の作品らしきブロンズ作品が所狭しと埋め込まれています。地域との共同作品は数ありますが、児童個人の作品が公共の場に設置されるなんて自慢話になると同時に5年、10年、20年後に想い出がよみがえりますね。
今回見た作品は、発想がすばらしい作品もありましたが、この場所にこの作品!という理由がイマイチのものもありました。ただ、地域環境をより良いものへ!というこうしたプロジェクトは、地域の津々浦々にも広がってほしい活動です。
炎天下の中、歩き疲れた私たちは、当然のごとく、浅草の名店「神谷バー」にて残暑払い?を決行と相成りました。これが、本来の目的かと思うほどの宴会でした。
朝倉彫塑館収蔵庫訪問
朝倉彫塑館
リポーター : Y.T.
今回の研修は、朝倉彫塑館収蔵庫にご縁があり、伺いました。
当日、日暮里駅に集合し、生地問屋さんや小学校、民家などが立ち並ぶ、東京といってもとても静寂な下町の道を歩くこと20分…。大通りを少し入ったところに収蔵庫はありました。建物を見た瞬間、一つ驚いたことが…、当時「朝倉文夫さんに、作品を作ってもらうのは、ステイタス中のステイタス!」というほど、実力も評価も高い作家の「朝倉文夫さんの作品が、ココにあります。」と、言わんばかりに、建物に「朝倉彫塑館収蔵庫」と、書いてあります。大事な作品たちを、防犯上ひっそりと保管するのではなく、堂々と(!?)保管しているのがなんとも太っ腹で「さすが!大物!」と唸らせるものでした。(私だったら、気づかれないように、しまっておきます)
収蔵庫の前で中へ声をかけようと待っていると、すこしふらつき、シャッターがガシャン、ガシャン…。「今日はスゴイ強風だ…」とのんきに思っていたら、みんな『地震だ…』と…。風じゃなかったのねっ!!少し心配していましたが、学芸員の村山万介さんが「休館で、たくさん作品が帰ってきているから散らかっていますが…」と、顔で迎えてくれました。早速中へお邪魔すると、1階に第1収蔵庫。ここは搬入出がしやすいように大物を保管しています。そのドアを開けてくださった瞬間…、薄暗がりから見える、大きな人!人!!人!!!「うわーっ!!コワイっ!!!」コレが、私の第一印象でした。だんだん気持ちが落ち着いたところで、よく見たり像と像の間にそっと入ってみたりすると、まるで自分が、こびとなったような気持ちです。見覚えのある顔がたくさん。そして石膏や胸像や足元だけの像も…。大きい像は組み立て式だそうです。運ぶのは大変だろうと気になっていると、「FRP素材のものは、2人でも運べる」とのこと。またブロンズは3mmまでと、薄さを競っていた時期もあり、日本の鋳造技術は高いとのこと…。まだまだ彫刻について知識の浅い私は、日本の技術の高さを全然知りませんでした。
たくさんの驚きで心が忙しい中、大きなエレベーターに乗り2階へ。この収蔵庫は第5収蔵庫まであり、各フロアーが収蔵庫になっています。第2収蔵庫は60点ほどの全身像。第3収蔵庫は150点ほどの胸像・首像。第4収蔵庫は胸像など。朝倉文夫にデビューと同時に名声をも与えた大学の卒業制作の作品《進化》も…。第5収蔵庫は、旅(貸出)から帰ってきたばかりの晩年のシリーズ作品の《猫》たちが、38匹。小さい作品が収蔵されています。館内の空調は『乾燥』に設定。その理由は、針金や木で形を作り、滑り止めに棕櫚縄を巻きつけ、粘土で肉付けした型から取った石膏原型の中は角材と鉄をはっていて、角材が湿気を吸って膨張すると石膏を突き破ってしまうからだそう…。石膏ってそんなにデリケートなものだったとは…また石膏型はブロンズの着色をして展示をするそうなのですが、この着色が痛むのも理由の一つだそうです。鋳造にいたっては、現在、東京・金町と埼玉・川口の工場に依頼しており、年々少なくなっているそうです。朝倉彫塑館では、「作品」と「コピー」の区別という観点から、必ず鋳造年、鋳造者名を作品に入れています。基本的に石膏原型から鋳造できるのは3回までだそうで、痛みやすい石膏原型の状態を見ながら、作品を大切に残していくのです。
また村山さんが各階でお話してくださる彫塑家・朝倉文夫の素顔が垣間見られるエピソードや、村山さんの朝倉作品への想いが感じられるトークがとても興味深いのです。2011年3月11日の東日本大震災の被害について。第3・4収蔵庫にある胸像・首像には、いまだに誰なのかわからない人が多いけれど、ご遺族からの依頼で判明することがあるほか、紳士録から、辿って行くことができるのではないか…、とか、38匹の帰ってきた《猫》たちを、説明してくださるのに、ひしめきあう《猫》たちの間をそっとつま先立ちで入り、手にとって説明してくださる仕草に朝倉作品に対しての村山さんの愛。朝倉文夫はドローイングやデッサンはせず、お弟子さん泣かせだったけれど、常に大好きな猫をひざに置き、撫でていたのは、猫の体を感覚で覚えていたのだろう…という作品製作過程での裏話。そして朝倉文夫は、肖像彫刻がステイタス・シンボルとなっていた時代とデビューする時代がマッチしたことで、名声を得、それを一言で、言い切る批評家が多いけれど、確かに、そうなんだけれど、本当は簡単に一言では言い切れないほどその裏づけが必ずある深い人であることを、顔をほころばせながらお話してくださった村山さんの作家・朝倉文夫への愛を強く感じました。
現在、朝倉彫塑館は耐震補強と原型回帰改修のため2013年3月までの予定で休館していますが、朝倉文夫は自分で地下を掘って螺旋階段を作り、移動や大作の制作を容易にしたり、アトリエを制作のために改良したりしていたため、新しい発見がたくさんあるとのことで、休館がもう少し長引きそうだとのことです。まだ先ではありますが、再び開館した際には足を運ぼうと思います。
今回の研修で、彫刻作品は実はたくさんの人の手に助けられ完成していることを知りました。そして作家自身がたくさんの人に愛されていてこそ、作品という形が成り立つのだと感じました。今後、彫刻作品を見た時にたくさんの想像が出来そうです。また彫刻ボランティアの活動でも、作品に関わってくださったたくさんの人の想いを汚さないよう、作品を良く知り、良い状態を維持できるようにしていきたいです。
*彫刻ボランティア担当学芸員より*
今回の研修会でお世話になりました朝倉彫塑館研究員・村山万介氏が3月にご逝去されました。朝倉文夫の芸術についてユーモアを交えてお話しくださった姿が忘れられず、突然の訃報に驚きを禁じ得ませんでした。彫刻ボランティア一同、心よりご冥福をお祈りしています。
彫刻あらいぐま、またまたまたまたまた参上!!!!!
埼玉県立近代美術館
リポーター : M.N.
2011年であらいぐまワークショップは6回目を迎え、3組8名の親子の皆さんに参加していただきました。
前日の強い雨が朝方まで残り、開催が心配されていた彫刻あらいぐまの日。重い雲は午前中にどこかへ消えてなくなり、午後にはすっかり晴れて洗浄日和となりました。
洗浄方法についてまずは講座室にてスタッフから説明をしました。その後美術館から外に出たところで、洗浄にとりかかる前に公園内の野外クルーズに出ました。
野外クルーズ
参加者の皆さん全員で彫刻に親しみを持っていただけるようなクイズをしながら園内を回りました。フェルナンド・ボテロの《横たわる人物》ではその人物の髪型をあてるという問題。正面からだと意外に後ろまで気づかないですね。皆さんと後ろに回って答えを確かめました。山本信の《這うものたちの午後の眠り》にはたくさんのカラフルなタイルが使われています。いったい何色かな。答え合わせでは「あか、みどり、くろ、きいろ」とみんなで数えてみました。サトル・タカダの《子午線-1993》では彫刻の中に三角形がいくつ隠れているかなという問題。答えを聞くと「ええーっそんなに!?」。三角形はとても大事なのですね。最後は橋本真之の《果実の中の木もれ陽》。作品を遠くから見て、穴がいくつあるでしょうかという問題。答えは近寄ってみるとわかります。大きい穴もありますが、小さい穴がたくさん!ここから木もれ陽が射しこんだ時に中を覗くと、とても幻想的かもしれませんよ。
これから訪れる方もこのクイズに挑戦してみてはいかがでしょうか。
実際の洗浄(いよいよ本番)
《横たわる人物》フェルナンド・ボテロ
参加者の皆さんにはワックス塗りと磨き上げをしていただきました。まるまると太った作風のブロンズ像をあらかじめスタッフが水と洗剤で洗浄しておきました。乾いた状態の像全体に、刷毛を使ってワックスを塗ります。ワックスはわりとすぐ乾くので、薄くむらなく塗るのにはある程度の塗るスピードも大切。皆さんも気を使って真剣に取り組まれていたようでした。そのあと布で全体をこすりますが、「磨き上げるのには結構力がいりますねぇ」の声があがりました。だんだんピカピカになってきて皆さん嬉しそうでした。
《果実の中の木もれ陽》橋本真之
参加者の皆さんにはウォーターガンを使って洗浄をしていただきました。銅をハンマーで叩いて延ばしてかたちを整える鍛金という技法で造られ増殖・成長しているこの作品に、ウォーターガンで一人一人交代しながら水をかけました。水が強く噴き出すので初めはこわごわでしたが、皆さん上手く彫刻にあてることができました。そのあと洗剤とスポンジで汚れをおとします。くねくねとした彫刻を大人の方には上の方、子どもさんには下の手の届くところをまんべんなく洗っていただきました。皆さんは時々大きい穴から中を覗いたりしていました。最後にまた交代しながらウォーターガンで洗い流し終了です。
まとめ
講座室に戻り、皆さんに修了証、記念写真、おみやげにぶんぶんごまをプレゼントしました。人数は少なかったですが、その分よりフレンドリーに彫刻に触れていただけたかと思います。《横たわる人物》のワックスの磨き上げは仕上げをスタッフがしました。通りかかるおりには仕上がり具合もみていただければ幸いです。