2008年9月の記事一覧

「Talk & Wash プロジェクト」橋本真之作品洗浄

埼玉県立春日部高校
リポーター : S.K.

 彫刻ボランティアの初めての出張洗浄活動が出来ました。また、県立春日部高校の110周年記念事業のほんの一部にお役に立つ事が出来たかと思います。
出張洗浄の話は以前より出ていましたが今回のきっかけは今年1月、東京国立近代美術館でメンバーのひとりが彫刻家の橋本真之氏、春日部高校の先生に会ったことでした。春高の中庭にある橋本氏の作品《千年の感応》の手入れ(洗浄)について先生は橋本氏に相談されていたようです。

 2月度の定例会でメンバーより報告がありその後は担当の学芸の方より春日部高校の先生に連絡をとっていただき、5月の定例活動日には打ち合わせのため来ていただいて洗浄作業も見てもらい概略決定しました。また7月15日には橋本氏に来館願い少人数での打ち合わせと7月27日の定例会にてスケジュール等最終決定となりました。

 当日、9月27日(土)12:00参加ボランティアは東武野田線八木崎駅に集合し、春高内へ。洗浄作業用の道具を車で運んでいただいた学芸員のおふたり、そして橋本氏は既に作品の前に居られました。開会までにやや時間があり、新規に揃えた「あらいぐまのTシャツ」を着て洗浄作業の準備をゆっくりすることができました。ただ橋本氏は自分の車にキーを付けたままドアをロックするというハプニングでJAFを呼んだりしてゆっくりとはできませんでした。

 1:30視聴覚室にて開会、校長あいさつの後、参加者の紹介があり、肝心の春高生徒は美術部など20名程度が参加してくれてホッとしました。

 そして橋本氏のトーク、仕事内容を紹介するDVDを併用して作品についての説明などを約30分にわたりしていただ

いたあと中庭の作品前へ全員が移動、すぐに鍛金を判ってもらうため、金鎚で銅版を打ってゆっくり作業の実演、生徒の皆さんも少しずつ叩くことが出来ました。真剣な様子も見せてもらいました。

 2:40頃より後半の洗浄作業。メンバーより洗い方の説明のあと、作品を反転して中に溜まっていた水を排出し、高圧洗浄機にて全体を洗い洗剤・スポンジで汚れを落とし、仕上げには橋本先生ご提案のつばき油を布でのばし塗り上げて完成となりました。このほとんどの作業を春高生徒たちの手で行ってもらいました。作品はやや黒光りして立派に見えました。

 作業終了後の3:40頃食堂にて閉会式。春高同窓会長のあいさつ、春高美術部の感想を交えたあいさつのあと、私がボランティア代表として近代美術館の彫刻ボランティアについて、及び今回の催しの発端などについて話をしました。

 4:30現地解散となり学芸員の方には作業道具を車で近美に運んでいただきました。

皆様お疲れさまでした。ありがとうございました。



《果実の中の木漏れ陽》の作者・橋本真之さんのアトリエ

《果実の中の木漏れ陽》の作者・橋本真之さんのアトリエにまた行ってきました!

橋本真之さんのアトリエ
リポーター : K.K

 上尾在住の作家、橋本真之さんのアトリエには、以前にも一度、彫刻ボランティアのメンバーでお邪魔させていただきました。その時は上尾駅で待ち合わせ、アトリエまでの道すがら、幼稚園の庭、マンションの一隅、街路樹の一角など、さまざまなところに展示された橋本さんの作品を自ら紹介していただき、とても密度の濃い時間を過ごすことができました。2008 年9月、再び作家のアトリエを訪問する機会に恵まれました。

 さて、橋本さんの作品の大きな特徴のひとつ、それは「増殖」ということです。銅板を槌で叩き延ばしていく「鍛金」という技法により、作品はその形を現していきますが、作家の両腕によって表出するモチーフは、刻一刻とさらに新しいモチーフを生み出していきます。アトリエにはプライマルなイメージを描き表したドローイングがあり、作家の心中には完成形のイメージが確固として存在しますが、作品はあたかも生物(植物?)のごとく、自らの意思で成長し、メタモルフォーゼを遂げていきます。作家が作品の設置場所として植物のある環境を好むのは、樹木の成長と同時に作品そのものも成長していく、「増殖による共生」というテーマを常に見据えているからにほかならず、その意思が銅板を叩くひとつひとつの「鍛」にこめられているが故に、完成した作品はその形で固定されることなく、さらなる増殖を求める衝動を発露していくのでしょう。

 野外設置を前提とした立体作品の場合、たとえば石彫であれば、作家は設計図を引き、それを基に専門業者が実際の作成を担当するようなこともあります。そうでなければ完成できないようなボリュームの作品であれば、当然のことです。しかし、橋本さんの手法は、ほぼすべての工程を自らの手で行い、作業の大半はアトリエ内で行われます。おのずと、アトリエで完成できるサイズはアトリエの広さ、そして搬出可能なボリュームということに制限されていきます。橋本さんのアトリエは、天井の高いスペースですが、入り口の大きさ、また住宅街でもあることから2t車で搬出できるサイズまでしか物理的な制作は不可能です。アトリエ前の庭には、すでに多くの作品が所狭しと置かれていて、そろそろ余裕のない状態です(笑)。

 そんな状況でも作家の制作は進んでいました。宇部や竹橋の展示作品に接続(溶接)されるべきパーツが着々と成長しています。しかし、アトリエの内部で作業できるサイズはそろそろ超えそうです。そこで彫刻ボランティアの出動!

 アトリエに到着すると、橋本さんが出迎えてくれました。早速、アトリエ内に案内していただき、搬出作業開始。橋本さんの作品は巨大ですが、基本的には中空なのでそれほど重くはありません。しかし、単純なフォルムではないので、傷をつけないように搬出するには細心の注意が必要。そこは気心知れた彫刻ボランティアのメンバー、絶妙のチームワークで搬出作業に取り組み、庭への作品搬出を無事に完了しました。

 作業終了後は前回訪問時に続き、橋本さんに鍛金の実習をお願いいたしました。2回目の人は、上達したでしょうか?(笑)