皆さんがご覧になる野外の彫刻は、必ずしも良好な保守状況にあるものばかりでなく、上面が腐蝕したものや、筋状の腐蝕痕がついたものも見ることが多々あることでしょう。なぜでしょうか?
雨、霧、結露といった湿性降下物には、酸性を含むものが多く、また昨今の大気汚染による大気粉塵、亜硫酸ガスや窒素酸化物酸性物質を含む乾性降下物などがそこに混ざり合うことで、さらに酸性の強い沈着物となります。
これらが彫刻の上面にたまると腐蝕を起こし、また雨により流れて筋状に沈着すると、縞模様の腐蝕を起こすのです。
このような沈着物を洗浄により除去すること、そして作品表面に付着を予防する為に保護剤を塗布することが、彫刻を保守するためにとても重要な作業となります。
ブロンズ作品のメインテナンス手法について
- まず、流水とスポンジを使い、表面の付着物(大気粉塵など)を洗い流します。
- 次に、水の溜まるところは水抜きの穴がありますので、細い棒などで良く掃除します。
- 陰イオン洗剤(環境にやさしい)を使い、スポンジで沈着物や腐蝕痕を良く洗います。
手の届きにくいところは、ブラシなどを使います。
環境汚染のため大変汚れていますので、時間をかけしっかり洗います。 - 流水で洗剤と汚れを充分に洗い流し、水分をふき取り、完全に乾燥させます。
- 天然素材の蜜蝋をリグロイン(うすめ液)で溶かして延ばします。
これで使用ワックスが出来上がります。 - 刷毛や布を使い、ワックスを作品全体に薄く、むらなく塗ります。
- ワックスが乾燥するまでしばらく待ちます。
- ワックスが乾燥したら、布で全体をこすりながら磨き上げ完了します。
ブロンズ以外の素材の彫刻作品について
- 洗浄については、基本的にブロンズ彫刻と同じです。
- 洗浄に使う用具は、スポンジのほか素材によりブラシ、たわしなども利用します。
場合によっては、ウォーターガンによる高圧洗浄水も利用します。 - ワックスなどの表面保護剤は、作品により使用、不使用を選択します。