カテゴリ:2010年度

彫刻あらいぐま、またまたまたまた参上!

埼玉県立近代美術館

 あらいぐまワークショップも、2010年で5回目を迎えました。今回は6組14名の親子の皆さんに参加して頂きました。

 最初に美術館講座室にて、彫刻の洗浄方法についてレクチャーがありました。その後、野外に移動して野外彫刻クルーズがスタート。フェルナンド・ポテロ『横たわる人物』、西野康造『風の中で』、山本信『這うものたちの午後の眠り』、サトル・タカダ『子午線-1993』、橋本真之『果実の中の木もれ陽』を、あらいぐまスタッフが素材や制作意図などについて解説しながら見学していきます。参加者の皆さんはとても興味津々な様子で、特に『子午線-1993』が描いた線の跡を見たときには「すごい!」という感嘆の声も上がっていました。

 彫刻クルーズの後はA班、B班に別れ、いよいよ彫刻洗浄を開始。今回は『横たわる人物』『果実の中の木もれ陽』を交互に洗浄しました。

 『横たわる人物』はブロンズ彫刻なので通常、水洗い、ワックスがけ、磨きあげという作業を行いますが、ワークショップではワックスがけと磨き上げを中心に行って頂きました。一組に一つワックスと刷毛を手渡し、全体にむらがないようにワックスを塗っていきます。今まで見るだけだった彫刻にワックスを塗るという作業はとても新鮮だったようで、皆さん熱心に作業を進めていました。ワックスがけの後に乾いた布でこすり磨き上げると、その部分がピカピカになったのを見て、皆さん満足そうでした。磨き上げはとても時間のかかる作業なので、最終的な仕上げはスタッフが行いました。

 『果実の中の木もれ陽』は、ウォーターガンによる水洗いとスポンジでの汚れ落としをして頂きました。ウォーターガンは大きな水鉄砲のようなものなので、子供たちに大人気。一人ずつ交代で担当してもらいましたが、とても楽しそうでした。十分に水がかかったら、スポンジで汚れを落とします。目に見えて汚れが落ちていくので、皆さん黙々と作業していました。叩いたり、穴の中をのぞいたりしてみる子供たちもいて、自分の楽しみ方で彫刻に触れ合えていたようです。最後にもう一度ウォーターガンで全体の汚れを洗い流し、作業終了です。

 約1時間の洗浄作業が終わると、講座室に移動。記念写真、修了証、おみやげとしてすりこぎトンボをプレゼントしました。すりこぎトンボは上手に回転させるためにはコツがいりますが、子供たちは簡単な説明で上手に回せるようになっていました。子供たちの飲み込みの早さは素晴らしいです。

 以上で約2時間半のワークショップが終了しました。アンケートには「楽しかった」「また来年も参加したい」などのコメントが多く、参加した皆さんに、とても喜んでもらえたようです。参加者の皆さんが美術館を出るときと、あらいぐまスタッフがワックスの磨き上げを終えるのがほぼ同じ時間だったので、ピカピカに磨きあがった『横たわる人物』をお見せすることが出来ました。「こんなに綺麗になるなんて、流石ですね」という褒め言葉で、私たちあらいぐまスタッフの疲れも吹き飛びました。







川越アート散策

川越駅西口広場 〜 川越市立美術館 〜 川越の町の彫刻めぐり(含小ギャラリー)
彫刻ボランティア見学研修会

リポーター : M.N.

 8月の晴れた暑い日の午後、美術館学芸員のお二人の案内で彫刻ボランティアの川越見学会がありました。川越は小江戸とも呼ばれ喜多院や本丸御殿など歴史的名所も多く、蔵造りの町並み、菓子屋横丁や川越まつり会館など、見どころ満載の町ですが、この日の見学はやはり彫刻の素材や状態なども気にしつつのアート中心の見学会となりました。

 まずJR川越駅から西口駅前の広場を訪れました。大きなくすの木のある広場には、若々しい女性が雁に手を伸ばす姿の中川敏之「初雁の像」、女性がゆったりと座る姿の三坂制「駘蕩」(たいとう)。地球の内部を連想するような球形をカットした形の田中毅「EARTH ’77」。田中毅の彫刻はこの後いくつか見ることができました。

 次は東口からバスに乗って川越市立美術館へ。美術館で出迎えてくれたのは柳宗理「道祖神」、橋本次郎「友好」など。周りにもいくつかの小彫刻が並んでいます。さて館内では竹久夢二展と常設展、金沢健一「音のかけら」とワークショップ展の見学をすることができました。 竹下夢二の肉筆画・版画・自著装丁本など静岡市美術館に所蔵される160点におよぶ志田コレクションで甘美な夢二芸術を楽しんだ後、常設展など鑑賞して、この日のもう一つの見どころ金沢健一の「音のかけら」に移りました。

 広いがらんとした会場に入ると床に丸い大きな円形が敷いてあるのが目に飛び込んできます。よく見るとさまざまな大きさと形に溶接した黒い鉄板のピースがジクソーパズルのように集合しているのでした。これだけでも美しい作品だと思いましたが、金沢氏はそれらをいろいろなもので触れることによって音を出します。たとえば、金属性のスティックみたいなもの、かたいボールのようなものなど。それらと鉄板が触れることによって思いがけない美しい音が出ます。金沢氏と複数の奏者による複合的な音と体に伝わる振動が重なる中で、私たちは心地よい不思議な世界へ誘われました。終わったあと、観客も自由に触って音を出すことができ、アートを体全体で感じ楽しむことができました。

 美術館の中には手袋をつけて彫刻を触ることができるタッチアートコーナーもありここには橋本次郎のいくつかの作品が展示してあります。目に障害のあるかたにも彫刻が楽しめ親しみがわく良い取りみだと感じました。

 その後、町のアート散策をしながらJR川越駅へ向かいました。川越高校の関根伸夫「川越高校門扉」、ひまわり幼稚園の神山喜代美「未来への輪」などを通り、図書館前の「ふれあいの像」、市営駐車場前にある「歌姫」など橋本次郎の彫刻も今回いくつも出会うことができました。稲荷小路にある小さな稲荷社のそばにひっそりと「おかわり」、うどん屋さんの前に「うんとんちゃん」、銀行前ポケットパークの植え込みの中に「贈り物」。いずれも田中毅ですが小さなかわいい動物系の彫刻がお茶碗を持っていたり、うどんを食べていたり、プレゼントをもっていたり、またこんなところに!と町の中の彫刻を探す楽しみも感じました。住宅街の中のぎゃらりーたまや、蔵造りの町並み沿いにあるお店の二階のギャラリーに寄ったり、昔懐かしい映画館「スカラ座」や「時の鐘」を眺めたり夕暮れまでわいわいと楽しく散策は続きました。

 川越にはアートマップに記載されているだけでも36もの野外彫刻やモニュメントがあります。ちなみに美術館やギャラリーは43か所、看板建築や洋風建築など時代を感じさせる建築なども14か所あります。この半日でたくさんの川越のアートを堪能させていただきましたが、それらが町全体に根付いていると感じました。まだまだ全部は見きれませんでしたので、また訪れて他のたくさんのアートと出合いたいと思いました。