カテゴリ:2008年度
ロダン《地獄の門》における鋳造問題
埼玉県立近代美術館
彫刻ボランティア特別研修会
リポーター : K.K.
《泉ー9個からなる》と彫刻について
《泉ー9個からなる》と彫刻について 講師:遠藤利克氏(彫刻家)
埼玉県立近代美術館
彫刻ボランティア特別研修会
リポーター : T.G.
《泉―9個からなる》は、どのように生まれたのか。その世界はどのようなものなのか。
過去の作品から現在の作品におけるつながりや、作品の精神性などを、スライドトークにより、とても詳しく解説して頂きました。遠藤さんはとても、気さくな感じの印象で、また彫刻への情熱はとても強く感じられました。
作品の《泉》は、素材の木を炭化させています。そのためには、燃やさなければなりませんが、そうした制作行為が、解説からとても重要な意味を示していると分かりました。まずは、《泉》以前に制作されてきた遠藤さんの彫刻ですが、《泉》の円環状になるまでに、幾つか作品になってきました。そこには、制作の根底にある大切な意識がありました。それが、水というテーマでした。
円環は、原型として大きな桶から始まります。やがて底を抜くことにより、円環となり、中のやわらかな丸みをそのままに、天(神霊の属する聖界)地(人間の属する俗界)を結ぶ大切な役割を果たす形となりました。(無限の器)
最終的には、燃やすことが、とても神聖な儀式のように受けとられるところであり、また哲学的なところでもあると感じました。
そこで、燃やすこととは、供犠(ぎょうぎ)であるとのことです。その意味は、神霊に対して供物や生贄(いけにえ)を捧げることとあり、その犠牲を聖界と俗界との媒介物として位置づけることができるとありました。つまり、ここでは、円環を燃やし炭化させることが供犠となります。
それらにより、俗界は安定を回復するとともに生命力、浄化力、繁殖力を人々にもたらすという意味を成してきます。また、9個の配置については、炭化させるときの状態で自然の中にある様子をイメージできるようにし、位置にきまりはないそうです。
さらに、制作にあたって生まれ故郷の岐阜県高山市での祭りからインスピレーションを得てきたことがあげられ、それが制作に大きな影響をもたらしてきたということでした。制作の後に遠藤さんは、昔から祭りの行われている場所の高山市の遺跡を改めて調べたそうです。すると、遺跡の形状は、木柱の下に石がありその下には、人骨が発見されていたことから、宗教的な儀式によって木柱がたてられた可能性があるとのことでした。また、木柱を円形状に並べた環状木柱列の遺跡は日本海側に多く分布していて、それらの下から、動物たちの骨が多く発掘されていることから、貝塚のようなものではなく、儀式的に埋められてきたと予測できるとのことです。(現在も調査中)
まとめとして、遠藤利克さんの彫刻は、精神世界が多くを占めていて、制作の意図を知ることで、さらに深く鑑賞できると思いました。この円環が、人間の身代わりになって、これまでの自然界での人間の罪を引き受けてくれているようにさえ感じました。
今回は、彫刻を写真で鑑賞させて頂きましたが、今後、作品を鑑賞できる機会に恵まれたら、彫刻の作り出す空間が、直接的に訴えかけてくれるのではないかと思いました。
今後の遠藤さんの彫刻がどのように制作され、またどのような世界に広がっていくのか、とても楽しみです。
《無限の器について)》
人は、古代から水によって、生かされてきました。その水を、地底から発掘した遺跡のように考えると、古代の水そのものが、貴重なものに思えてきます。 初期の制作で、地底に器を埋めて水を中にいれたものがあります。その器に入った水は、無限の可能性を秘めていて、地底と地上を繋ぐ永遠性と連続性を生み出すものとなりました。
ワークショップ 彫刻あらいぐま、またまた参上!
リポーター : T.K.
~第3回・彫刻あらいぐま開催レポート~
あらいぐまワークショップも今年で3年連続となり、3期生が広報・取りまとめを担当しました。幸いこれまでで最高の親子計22名が参加、彫刻洗いやワックスがけを楽しみました。
■ボテロ作品にワックスをかける
洗浄したあと、皆でワックスがけ。ボテロ作品は子どもにとってけっこうな高さの台の上にあります。水で滑りやすくなっていることもあり、安全に気をつけながらの作業。水抜きの穴や、ボテロの作品の特徴などについても説明。 塗りムラ、塗り残しがないように目を配ります。
ワックスのあとは、布で磨きます。大人数なのでなかなか大変。台から落っこちてしまったり、疲れからかぐずってしまう子もいました。
■橋本作品をウォーターガンで洗う
まだまだ蚊が元気。虫よけスプレーをしてから洗います。ウォーターガンは、皆が体験できるように順番で使いました。
ウォーターガンを使ったあとは、洗剤をつけたスポンジで汚れを取ります。穴の中をのぞいたり、たたいて音を確かめたり。いつもは見るだけだった“芸術作品”が、今日は公園の遊具のよう。
-まとめ(反省・感想)-
今回は、彫刻洗浄ボランティアTシャツを着たり、修了証やあらいぐまシールをおみやげにするなど、前回よりもボランティアや「彫刻あらいぐま」イベントのアピールが出来たかと思います。
また、前回は少人数だったため、参加者全員で2つの作品を洗いました。しかし今回は、ボランティアメンバーのお子さんや、当日飛び入り参加の方も加わって、集合場所の講座室は大にぎわい。2班に分かれて交代で洗浄することになり、皆をまとめる大変さと、楽しさを感じることが出来ました。 反省点は、春日部高校の出張洗浄イベントのあとだったこともあり、ミーティングや欠席した方への連絡が不十分だったこと。当日、役割分担などでバタバタしてしまいました。また、特にボテロの洗浄時は滑りやすく、安全面の注意の必要性を感じました。
-日程詳細-
12:15 彫刻ボランティア集合。予備洗浄や受付準備
13:00 受付開始
13:30 ワークショップ開始。講座室で簡単なあいさつの後、移動
13:45 洗浄作業スタート14:30 班の交代時に、ボテロの前で記念撮影 14:40 洗浄終了。講座室に移動後、クイズやおみやげの受け渡し
15:00 ワークショップ終了、ボランティア反省会
「Talk & Wash プロジェクト」橋本真之作品洗浄
リポーター : S.K.
彫刻ボランティアの初めての出張洗浄活動が出来ました。また、県立春日部高校の110周年記念事業のほんの一部にお役に立つ事が出来たかと思います。
出張洗浄の話は以前より出ていましたが今回のきっかけは今年1月、東京国立近代美術館でメンバーのひとりが彫刻家の橋本真之氏、春日部高校の先生に会ったことでした。春高の中庭にある橋本氏の作品《千年の感応》の手入れ(洗浄)について先生は橋本氏に相談されていたようです。
2月度の定例会でメンバーより報告がありその後は担当の学芸の方より春日部高校の先生に連絡をとっていただき、5月の定例活動日には打ち合わせのため来ていただいて洗浄作業も見てもらい概略決定しました。また7月15日には橋本氏に来館願い少人数での打ち合わせと7月27日の定例会にてスケジュール等最終決定となりました。
当日、9月27日(土)12:00参加ボランティアは東武野田線八木崎駅に集合し、春高内へ。洗浄作業用の道具を車で運んでいただいた学芸員のおふたり、そして橋本氏は既に作品の前に居られました。開会までにやや時間があり、新規に揃えた「あらいぐまのTシャツ」を着て洗浄作業の準備をゆっくりすることができました。ただ橋本氏は自分の車にキーを付けたままドアをロックするというハプニングでJAFを呼んだりしてゆっくりとはできませんでした。
1:30視聴覚室にて開会、校長あいさつの後、参加者の紹介があり、肝心の春高生徒は美術部など20名程度が参加してくれてホッとしました。
そして橋本氏のトーク、仕事内容を紹介するDVDを併用して作品についての説明などを約30分にわたりしていただ
いたあと中庭の作品前へ全員が移動、すぐに鍛金を判ってもらうため、金鎚で銅版を打ってゆっくり作業の実演、生徒の皆さんも少しずつ叩くことが出来ました。真剣な様子も見せてもらいました。
2:40頃より後半の洗浄作業。メンバーより洗い方の説明のあと、作品を反転して中に溜まっていた水を排出し、高圧洗浄機にて全体を洗い洗剤・スポンジで汚れを落とし、仕上げには橋本先生ご提案のつばき油を布でのばし塗り上げて完成となりました。このほとんどの作業を春高生徒たちの手で行ってもらいました。作品はやや黒光りして立派に見えました。
作業終了後の3:40頃食堂にて閉会式。春高同窓会長のあいさつ、春高美術部の感想を交えたあいさつのあと、私がボランティア代表として近代美術館の彫刻ボランティアについて、及び今回の催しの発端などについて話をしました。
4:30現地解散となり学芸員の方には作業道具を車で近美に運んでいただきました。
皆様お疲れさまでした。ありがとうございました。
《果実の中の木漏れ陽》の作者・橋本真之さんのアトリエ
橋本真之さんのアトリエ
リポーター : K.K