《果実の中の木漏れ陽》の作者・橋本真之さんのアトリエ

《果実の中の木漏れ陽》の作者・橋本真之さんのアトリエにまた行ってきました!

橋本真之さんのアトリエ
リポーター : K.K

 上尾在住の作家、橋本真之さんのアトリエには、以前にも一度、彫刻ボランティアのメンバーでお邪魔させていただきました。その時は上尾駅で待ち合わせ、アトリエまでの道すがら、幼稚園の庭、マンションの一隅、街路樹の一角など、さまざまなところに展示された橋本さんの作品を自ら紹介していただき、とても密度の濃い時間を過ごすことができました。2008 年9月、再び作家のアトリエを訪問する機会に恵まれました。

 さて、橋本さんの作品の大きな特徴のひとつ、それは「増殖」ということです。銅板を槌で叩き延ばしていく「鍛金」という技法により、作品はその形を現していきますが、作家の両腕によって表出するモチーフは、刻一刻とさらに新しいモチーフを生み出していきます。アトリエにはプライマルなイメージを描き表したドローイングがあり、作家の心中には完成形のイメージが確固として存在しますが、作品はあたかも生物(植物?)のごとく、自らの意思で成長し、メタモルフォーゼを遂げていきます。作家が作品の設置場所として植物のある環境を好むのは、樹木の成長と同時に作品そのものも成長していく、「増殖による共生」というテーマを常に見据えているからにほかならず、その意思が銅板を叩くひとつひとつの「鍛」にこめられているが故に、完成した作品はその形で固定されることなく、さらなる増殖を求める衝動を発露していくのでしょう。

 野外設置を前提とした立体作品の場合、たとえば石彫であれば、作家は設計図を引き、それを基に専門業者が実際の作成を担当するようなこともあります。そうでなければ完成できないようなボリュームの作品であれば、当然のことです。しかし、橋本さんの手法は、ほぼすべての工程を自らの手で行い、作業の大半はアトリエ内で行われます。おのずと、アトリエで完成できるサイズはアトリエの広さ、そして搬出可能なボリュームということに制限されていきます。橋本さんのアトリエは、天井の高いスペースですが、入り口の大きさ、また住宅街でもあることから2t車で搬出できるサイズまでしか物理的な制作は不可能です。アトリエ前の庭には、すでに多くの作品が所狭しと置かれていて、そろそろ余裕のない状態です(笑)。

 そんな状況でも作家の制作は進んでいました。宇部や竹橋の展示作品に接続(溶接)されるべきパーツが着々と成長しています。しかし、アトリエの内部で作業できるサイズはそろそろ超えそうです。そこで彫刻ボランティアの出動!

 アトリエに到着すると、橋本さんが出迎えてくれました。早速、アトリエ内に案内していただき、搬出作業開始。橋本さんの作品は巨大ですが、基本的には中空なのでそれほど重くはありません。しかし、単純なフォルムではないので、傷をつけないように搬出するには細心の注意が必要。そこは気心知れた彫刻ボランティアのメンバー、絶妙のチームワークで搬出作業に取り組み、庭への作品搬出を無事に完了しました。

 作業終了後は前回訪問時に続き、橋本さんに鍛金の実習をお願いいたしました。2回目の人は、上達したでしょうか?(笑)