令和7年度 公募展「みつめて、かんじて、たべてみて!―作品のみかた・味わいかた」は、3年目を迎え「美術作品を鑑賞して、食として表現する」という観点で作品の募集を行いました。当館の所蔵作品である課題作品4点 ①ポール・シニャック《アニエールの河岸》1885年、②木村直道《シンバルを叩く男(バックミラー楽団)》1965-68年、③橋本真之《果実の中の木もれ陽》1985年-、④テルイェ・エクストレム《エクストレム》1984年(製品化)から1点を鑑賞して湧き上がった「食」のイメージ(食感、味や匂いなど)を、感性を働かせて自由な発想で絵にして表現するコンクールです。令和7年度は県内の小学校、中学校、高等学校の児童生徒から、73点の応募がありました。厳正な審査の結果、9作品が受賞作品に選ばれました。おめでとうございます。また、たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。
そして一昨年から審査員を務めていただいているアーティスト・ユニットL PACK.の小田桐奨氏と中嶋哲矢氏により、総合グランプリ(審査員特別賞)に選ばれた久間梨香子さんの「にっこりほっこりパスタ ~宇宙味~」が食べ物として創作され、試食イベントを11月16日の表彰式後に開催しました。久間さんは課題作品の橋本真之《果実の中の木もれ陽》を鑑賞し、作品の形、特に穴が開いている形態に着目しました。木の間から光がさす様子から作品の題名にあるような「木もれ陽」を感じたそうです。
L PACK.の中嶋氏は講評の中で、「うねうねとした造形が特徴の橋本真之の作品ですが、金属の曲線を人が宇宙の無重力空間で自由自在にふわふわと動く様子として捉えた着目点が素敵です。また穴から見えるさまざまな背景や丸い形を果実や宇宙に漂う惑星に見せてくれる解釈にもびっくりしました。そこから発想したパスタはどんどんと増殖していく橋本の作品のよう。紙全体に描かれた迫力と、カラフルな色使いが、丸の向こう側まで細かく良くかけた可愛い作品です。」と述べています。
審査会後、L PACK.のお二人は、約1ヵ月の準備期間をかけて、久間さんの作品の主題を色や形、食材で見事に表現し、誰もが味わったことのない七色の宇宙味パスタを創作してくださいました。「フルーツが大好き」という久間さん。L PACK.のお二人は着色料を使わず自然の素材からパスタに色をつけ、七色のフルーツ味に仕上げました。
「未体験のパスタでアート味体験(みたいけん)になっちゃった?!」そんな会話の聞こえる試食イベントになりました。
深い鑑賞によって、見ても食べても新しい発見がある。この公募展は、令和8年度も課題作品を変えて、同じく「食」をテーマに開催予定です。ぜひ、公募展をきっかけとして、埼玉県立近代美術館を訪れてみませんか。美術館の作品を、諸感覚を使って感じてみましょう。
現在、過去3年間の総合グランプリ受賞作品とイベントの様子を企画展「コレクションの舞台裏」第7章にて展示中です(5月10日まで)。ぜひご覧ください。