学校と美術館 これまでの報告

第1回教員美術講座の報告

・講師 高須賀 昌志 氏 (デザイナー・埼玉大学教授)

・時間 10:30~16:30

・場所 3階創作室・講座室など

・参加人数 56名


 今年も「座れる段ボールの椅子グランプリ」を開催します。このコンクールと連動した教員美術講座を5月31日に開催しました。「どのようにしたら段ボールで大人が座れる椅子をつくることができるのか」をテーマに、埼玉大学教授 高須賀 昌志先生を講師に迎え、実際に制作しながら体験してもらいました。段ボールの特性や、強度を出すための基礎知識などのレクチャーのあと、早速アイデアを出す体験をしました。
 
 鉛筆で設計図を描いたりはしません。画用紙や薄手の段ボールを使って短時間でいきなり作ります。「素材を触りながら、素材から考える。そうすると、その素材ならではの形が生まれます」(高須賀先生)。参加者のアイデアから、特に素材感の出ているアイデアをピックアップし高須賀先生が紹介してくれました。



 

次に、参加者は先ほどのアイデアに手を加えつつ、段ボールを使って実際の大きさで椅子の制作をしました。生徒たちは、グループで先生と一緒に考えます。ただ、アイデアの段階であまり先生が方向付けしてしまうと面白いものは出なくなります。大人だと「こんな形では無理じゃないかな?」と思うものを知恵を出し合って形にしたときにそれまで見たことのない形に出会えるのかもしれません。

 先生方は大人ならではの感覚で、形にしていきました。大人の知恵や考え方は子どもたちにはないもの。そこにはたくさん学ぶべきヒントが潜んでいます。高須賀先生もそこに注目して講評会で紹介していました。

 2時間半ほど段ボールと格闘した末、たくさんのアイデアが形になりました。自信を持って座れる作品、まだちょっと不安定なものなどなどありましたが、これからさらにブラッシュアップしていくことで面白い作品になっていきそうなものばかりです。

 講評会では中学生、高校生、大人のそれぞれのアプローチの仕方の違いも見られ、それぞれの良さが表れていました。




 

座れる段ボールの椅子グランプリの入選作品は、8月23日(土)~8月31日(日)

当館1階ロビー及び3階エリアに展示されます。

 

2012年7月

埼玉県立近代美術館のホームページがリニューアルしました。合わせて、「学校と美術館」のページもより扱いやすくしました。いかがでしょうか?ご意見等お寄せいただけたらと思います。さらに扱いやすい形を目指していきたいと思います。
さて、今回のリニューアルから、「学校と美術館」の最新情報を毎月UPしていきます。その時々の情報を日記風にお伝えします。美術館活用方法のヒントを実際の活用の様子などからつかんでいただければと考えています。ご注目ください!
第1回は、入間市立向原中学校の美術部の皆さんが美術館を活用した鑑賞学習をした様子と、所沢市立宮前小学校での5年生を対象とした授業協力の様子をお届けします。
7月7日(土)から企画展「ウルトラマン・アート!」が始まりました。初日から沢山の方が来場され、ウルトラマンを支えたアートの力を感じてくださっていました。そんな中、入間市立向原中学校の美術部の皆さんが訪れてくれました。まずはじめに常設展コレクションの鑑賞からスタート。肩慣らしにジョージ・シーガル《赤いシャツを着た三つの人体》を鑑賞しました。右上の写真は、3人でこの絵の人物を想像しながらポーズをしているところです。見えない姿をそこに描かれている情報を手掛かりに想像してみると・・・。いろいろなポーズが出てくるので不思議です。人によって視点や感じ方が違うのがわかります。合わせて、自分ひとりじゃ気付けなかった視点が見えたりするのも面白いですね。
そのあと、常設展示室へ。学校でアートカードを使った鑑賞を行っていた生徒さん達は、その中で見た実物作品に出会って大喜び!「ねぇ!これ見たよね。こんなに大きいんだね」と熱心に作品の前で友人と話しながら見ている姿が印象的でした。
「ウルトラマン・アート!」では、メトロン星人とちゃぶ台を挟んで記念写真を撮ったり、ウルトラマンの初期アイデアスケッチなどを熱心に見ていました。
今年の夏は30周年特別記念展を常設展示室で行います。ぜひ、部活動等でご利用ください。お電話お待ちしています。教育普及スタッフがご案内します。
つづいて、これまでに授業協力でお世話になった学校の中から、所沢市立宮前小学校5年生の皆さんの授業の様子をお伝えします。
この日は、パブロ・ピカソが描いた《静物》を鑑賞しました。この作品の鑑賞の場合、ちょっとした趣向を凝らします。
まずはパブロ・ピカソの紹介から。意外と知っているようで知らないピカソ。子ども達にいろいろなアーティストの顔写真の中からピカソを探してもらいます。すると、ピカソの写真を見て「絶対この人じゃないよ」となります。たくさんの子ども達が「この人がピカソだよ」と選ぶのはマチスの写真。そして、面白いのは、ピカソとマチスが親友だったということ。そんな話も紹介しながら次へ。沢山の絵の中からピカソの作品を選んでもらいます。これも結構意見が分かれるので面白い。若いころの作品や晩年の作品はピカソじゃないというんですね。そのあと少しづつ作品からピカソの人生を紐解いていきます。最後に行き着くのが、パブロ・ピカソが描いた《静物》。ここからどんな見方が飛び出すのかいつも楽しみです。
こうした授業協力のほか、複製画やアートカード、鑑賞プログラムなどの貸し出しも行っています。ぜひお電話ください。お待ちしています。


《赤いシャツを着た三つの人体》の前で


「この作品、しってるー!!」


メトロン星人と一緒に


授業の様子