女性たちの映像表現
映画や音楽、パフォーマンスといった、展覧会ではなかなかご紹介できない表現について取り上げるイベントとしてミュージアム・シアターを開催します。
第2回の2023年度は、「女性たちの映像表現」をテーマに、マヤ・デレン、出光真子、清原惟の映像作品の上映および清原惟氏と中西香南子氏によるトークを実施します。
日時
2024年3月17日(日)13:00~16:30(開場12:30)
2024年3月24日(日)12:30~15:50(開場12:00)
※上映スケジュールの詳細は下記参照
上映作品
マヤ・デレン | 「午後の網目」(1943) 「陸地にて」(1944) 「変形された時間での儀礼」(1946) |
出光真子 |
「おんなのさくひん」(1973) |
清原惟 | 「ひとつのバガテル」(2015) 「わたしたちの家」(2017) |
ゲストによるトーク
清原惟(映画監督・映像作家)、中西香南子(国立映画アーカイブ 特定研究員)
場所
2階講堂
定員
各回80名(当日先着順、途中退出可)
費用
無料
上映スケジュール
※出入り自由。途中休憩を挟みます。
<3月17日(日)>
12:30 | 開場 |
13:00~13:45 |
マヤ・デレン |
14:00~15:00 |
出光真子 |
15:15~16:27 |
清原惟 |
<3月24日(日)>
12:00 | 開場 |
12:30~13:15 |
マヤ・デレン |
13:30~14:20 |
出光真子 |
14:30~15:50 |
清原惟 |
上映終了後 | 清原惟氏×中西香南子氏 トーク(45分程度) |
作家紹介
マヤ・デレン
1917年、ウクライナ・キーウのユダヤ人精神科医の元に生まれる。22年に一家でアメリカに移住、28年にはアメリカに帰化した。学生時代にジャーナリズムや政治学を専攻するほか、舞踊や人類学にも関心をもつ。43年、チェコから亡命中の映像作家アレクサンダー・ハミッドと共同で実験的な映画「午後の網目」を制作し、47年のカンヌ映画祭・実験映画部門でグランプリを獲得した。61年、脳溢血で死去。
出光 真子
1940年、出光興産創業者・出光佐三の四女として生まれる。お茶の水女子大学付属小・中・高から早稲田大学第一文学部に進学し、卒業後はニューヨークへ留学。画家のサム・フランシスと結婚し、二児の母となる。家父長制の強い家庭で育った経験や妻であり母である自身の立場をベースに、フェミニズム的傾向の映像作品を多数制作している。
清原 惟
1992年、東京に生まれる。武蔵野美術大学映像学科卒業、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域修了。大学院の修了制作として撮影した「わたしたちの家」がPFFアワード2017でグランプリを受賞。その後も第68回ベルリン国際映画祭に正式出品するなど、国内外で受賞・作品上映される。2024年3月より、新作「すべての夜を思いだす」が劇場公開。
上映作品紹介
マヤ・デレン
午後の網目 Meshes of the Afternoon
1943年/14分/共同監督:アレクサンダー・ハミッド/音楽:テイジ・イトー(1959年に追加)
道に落ちている花一輪。少女の影がそれを拾い、やがて少女は玄関の扉を鍵で開けて家に入る。部屋のなかにはパン切りナイフや受話器の外れた電話。少女は階段を上る。風にたなびくカーテンと空転するレコード。少女は椅子に座り、瞳を閉じる。その傍らに同じ少女が立ち、窓の外を眺める。夢のような景色……。デレンは夢を媒介にしながら、内面の探求に向かうが、同時に映画そのものの構造をも構造をも探求した傑作。
陸地にて At Land
1944年/15分/サイレント
海岸に打ち寄せられ横たわるデレンの身体。流木の間を這い上がってゆくと、そこには正装をした紳士淑女たちがチェスに興じている。官能的かつ触覚的作品。
変形された時間での儀礼 Ritual in Transfigured Time
1946年/15分/サイレント
アパートの部屋を行き来する女。部屋にあらわれる別の女。日常的な所作とダンサーの動きによる儀式。ストップモーションの手法を用いて、奇妙な時空間が豊かに創造される。
出光 真子
おんなのさくひん What a Woman Made
1973年/10分50秒/オリジナル:ビデオ
出光真子が手がけた初のビデオ作品。使用済みのタンポンがトイレに落とされた様子を記録した映像に、延々と女の子をどう育てるべきかについて説明するナレーションが重ねられる。英語タイトル(What a Woman Made)が示唆するように、「女」あるいは「女性らしさ」が社会的にどのようにつくりあげられるのかを浮かび上がらせる。
Something Within Me
1975年/9分30秒/オリジナル:フィルム
生々しいほどの花のクローズアップ、蠢くカタツムリの群れ、植物の葉の影…意識と無意識の間を漂う出光の情感を豊かにとらえた作品。音楽はピアニストの高橋アキによるもの。
主婦の一日 Another Day of a Housewife
1977年/9分50秒/オリジナル:ビデオ
典型的な主婦のありふれた日常を出光自身の出演で描く。モニターに映し出される大きな目が、つきまとうように彼女を見つめ続ける。
At Any Place 4:ヨネヤマ ママコ作「主婦のタンゴ」より
1978年/12分30秒/オリジナル:フィルム
「あけてもくれても台所で皿を洗う…」という歌詞で始まる、1975年の国際婦人年のために制作・自演したヨネヤマママコの伝説的パントマイム「主婦のタンゴ」。そこに、出光が手がけた映像がオーヴァーラップする。ユーモラスでありながら、主婦たちの悲痛な叫びが響き合う、独創的な作品。
父の情景 Emotional Volatility of My Father
1981年/5分50秒/オリジナル:フィルム
女の子の人形と真っ赤な花びら。次々と落下し画面を埋め尽くすレバーが、身体感覚を喚起させる。亡くなった出光の父への鎮魂歌。
ざわめきの下で Whispering Light
1985年/10分50秒/オリジナル:フィルム
柔らかい光に包まれた植物の映像に重ねて語られる生前の母の思い出や心境。出光自身の母の死について撮影したリリカルな作品。
加恵、女の子でしょ! Kae , Act Like a Girl !
1996年/47分20秒/オリジナル:ビデオ
シモーヌ・ド・ポーボワールの「第二の性」から着想し、芸術家カップルに起こる問題を描いた作品。制作に集中し、評価を獲得していく夫に対し、自分の制作のための時間とエネルギーを家事や雑用に使う加恵。「女の子でしょ」という呪いのような言葉に打ち克とうと奮闘する加恵の姿には、出光自身の経験や感情が重ねられている。
清原 惟
ひとつのバガテル
2015年/72分
団地でピアノのある部屋を間借りして暮らしているあき。ある時、一通の差出人不明の手紙を受け取る。手紙に示された場所を探し団地を歩くが、それは存在しない番地だった。部屋に残された音の記憶をたよりに、あきは自分の音楽をみつけようとする。
わたしたちの家
2017年/80分
セリはもうすぐ14歳。父親が失踪して以来、母親の桐子と二人暮らし。最近、母親に新しい恋人ができて複雑な気持ちになっている。一方、さなは目覚めるとフェリーに乗っており、自分に関する記憶がなくなっていた。彼女は船内で出会った女性、透子の家に住まわせてもらうことになる。二つのストーリーは独特な構造を持つ一軒の同じ「家」の中で進行する。これはいったいどういうことなのか?映画史上、誰一人として思いつかなかった、特異で甘美な室内劇。