本展は近年当館の収蔵作家となった早瀬龍江(1905-1991)、ジョナス・メカス(1922-2019)、林芳史(1943-2001)に、ゲスト・アーティストとして潘逸舟(1987年生まれ)を加えた4名の作家に焦点を当て、作品や関連資料、関連作家の作品を交えながら紹介します。
日常と非日常、虚構と現実、過去と現在、国境、ジェンダーなど、世界には目に見える、あるいは目に見えない多くの境界があります。境界の存在は、向こう側を曇らせてしまうこともあれば、他方では自分の居場所を守るための拠りどころになることもあるでしょう。過去から現在まで、多くの作家がこうした境界の多様なあり方に着目し、作品を通してそれを浮かび上がらせようとしてきました。また、境界に立つ当事者としての自身のアイデンティティに向き合い、制作を続ける作家も少なくありません。
本展はこのような視点から、日常的な営みを起点に、絵画、版画、ドローイング、映像などそれぞれのメディアを用いた試みを重ね、他者との境界やアイデンティティについて思索を深める各作家の足跡を紹介します。さまざまな境界線のあわいに立ち、往還する作家たちの眼差しと手探りは、現在に生きる私たちの視野を豊かに広げてくれることでしょう。
会期
2023年10月14日(土) ~ 2024年1月28日(日)
休館日
月曜日(ただし、1月8日は開館)、12月25日(月)~1月3日(水)
開館時間
10:00 ~ 17:30(展示室への入場は17:00まで)
観覧料
一般1000円(800円)、大高生800円(640円)
※( ) 内は20名以上の団体料金
※中学生以下は無料
※障害者手帳等をご提示の方 (付き添いの方1名を含む) は無料
※企画展観覧券(ぐるっとパスを除く)をお持ちの方は、併せてMOMASコレクション (1階展示室) もご覧いただけます。
主催
埼玉県立近代美術館、さいたま国際芸術祭実行委員会
協力
RE:VOIR
広報協力
JR東日本大宮支社、FM NACK5
出品作品
「イン・ビトウィーン」出品リスト
本展の見どころ
1. 4名の作家を新たな視点から紹介
本展は、近年当館の収蔵作家となった早瀬龍江、ジョナス・メカス、林芳史に、ゲスト・アーティストとして潘逸舟を加えた4名に焦点を当て、4つの小個展が連なるように構成されます。早瀬、メカス、林については、当館のコレクションを起点に借用作品や資料、関連作家の作品も交えて、当館ならではの新たな視点からその作家像を検証します。
2. ゲスト・アーティストとして潘逸舟が参加
ゲスト・アーティストとして、東京を拠点に活動する作家・潘逸舟が参加します。潘は、個と社会、共同体との関係やアイデンティティをテーマに、自らの身体を用いたパフォーマンス、映像、インスタレーション、絵画などを様々なメディアを用いて表現しています。本展では、コロナ禍の中国・上海での隔離生活の経験を題材に、目に見えない境界についての問いかける新作を展示します。
3. タイトル「イン・ビトウィーン」の由来
本展のタイトル「イン・ビトウィーン」(In Between)は、ジョナス・メカスの同題の映像作品から着想されています。本展では、飽くなき思索を続ける4名の出品作家を、境界の「狭間に立つ」者として捉え、今日的な視点を交えて、彼らの眼差しを探ります。 なお、本展では、近年も世界中で作品が上映されているジョナス・メカスの活動を、“旅”を軸に紹介。晩年の重要作「幸せな人生からの拾遺集」などの映像作品を会場で上映する他、関連イベントとして作品上映会も開催します。
作家略歴(生年順、敬称略)
早瀬龍江(はやせ・たつえ/1905-1991)
北海道の奥尻島に生まれる。女子英学塾(現・津田塾大学)在学中に油彩を始め、福沢一郎の絵画研究所に通い、そこでシュルレアリスム絵画と出会う。ヒエロニムス・ボス風の幻想的な作品や、自身の容貌や食物、日用品等をモチーフにした作品を手がけ、美術文化協会などに発表する。1943年より夫・白木正一とともに現在の埼玉県飯能市に居住し、49年同地に白木美術研究所を設立。1958年白木と渡米し、89年までニューヨークに滞在、絵画や立体作品の制作を続けた。
早瀬龍江《願望》1953年、埼玉県立近代美術館蔵
関連作家:福沢一郎、白木正一、真鍋(金子)英雄、片谷美香(愛子)、山下菊二、堀田操
ジョナス・メカス(1922-2019)
リトアニア、セメニシュケイに生まれる。第二次世界大戦下の1944年、ナチスの強制労働収容所に収容されるが脱走し、弟アドルファスと難民キャンプを転々とする。1949年アメリカに亡命。16ミリフィルムカメラ「ボレックス」を手に入れ、日記を綴るように日常の光景を撮影し始める。雑誌『フィルム・カルチャー』の刊行や「アンソロジー・フィルム・アーカイヴズ」の設立などを通して、前衛映画作家たちの懸け橋となるべく奔走した。リトアニア語の詩人としても活動した。
ジョナス・メカス《ウーナ・メカス 5才 猫とホリス(母)の前でヴァイオリンの稽古 1979》1983年、埼玉県立近代美術館蔵
林 芳史(はやし・よしふみ/1943-2001)
在日韓国人二世として大阪府に生まれる(後に日本国籍を取得)。早稲田大学在学中に哲学や現代思想への関心を深める。美術評論家として活動し、李禹煥や郭仁植、関根伸夫、鈴木慶則など同時代の作家たちの作品の評論に携わりながら、制作活動も行う。1970年代中頃、鉛筆やコンテの描線を版画に重ねた作品やフロッタージュなどドローイングや版画を中心に制作する。次第に東洋思想に傾倒し、1980年代以降は、墨と和紙を用いて、筆触や墨の滲みによって引き出される繊細で豊かなニュアンスを持った抽象画を手がけた。
林芳史《習作》1975年頃、埼玉県立近代美術館蔵
関連作家:郭仁植、飯田昭二、鈴木慶則、李禹煥、伊丹潤、関根伸夫
潘 逸舟(はん・いしゅ/1987年生まれ)
中国、上海に生まれる。2012年東京藝術大学美術研究科先端芸術表現大学院修了。幼少期に上海から青森に移住した自身の経験をベースに、社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑いを、自らの身体を用いたパフォーマンス、映像、インスタレーションによって表現する。近年の展覧会に、「海、リビングルーム、頭蓋骨」(2021年、東京都現代美術館)、「国際芸術祭あいち 2022」(2022年、愛知県美術館)、「ホーム・スイート・ホーム」(2023年、国立国際美術館)など。
潘逸舟《家を見つめる窓》2023年、作家蔵
関連イベント
アーティスト・トーク 潘逸舟(出品作家)× 長島有里枝(アーチスト)
日時|2023年10月14日(土) 15:00~16:30(開場は14:30)
場所|当館2階講堂
定員|80名(申込不要、先着順)
参加料|無料
ジョナス・メカス映像作品上映会&トーク
①第1回
日時|2023年11月12日(日) 13:30~15:40(開場は13:00)
プログラム|「いまだ失われざる楽園、あるいはウーナ3歳の年」「富士山への道すがら、私が見たものは…」(16mmフィルムによる上映)
配給|メカス日本日記の会
②第2回
日時|12月24日(日)13:30~15:15(開場は13:00)
プログラム|「アンディ・ウォーホルの授賞式」「楽園のこちら側」ほか(デジタル上映)
配給|RE:VOIR、メカス日本日記の会
③ゲストによるトーク
ゲスト|清原惟(映画監督・映像作家)×井戸沼紀美(「肌蹴る光線」主宰)
日時|12月24日(日)15:30~[1時間程度]
①~③共通
場所|当館2階講堂
定員|60名(事前申込制、先着順、複数申込可)
参加費|無料
申込方法|当館ホームページからお申し込みください
受付開始日|10月3日(火)午前10時
*プログラムの詳細及び申込URLは上映会ページをご確認ください
ワークショップ「見つめる窓」
講師|潘逸舟(出品作家)
日時|12月3日(日)、12月10日(日)各13:30~15:30 *2日間のワークショップです
定員|10名(事前申込制、応募者多数の場合は抽選)
対象|小学校中学年以上(2日間参加できる方)
申込方法|下記URL(埼玉県電子申請・届出サービス)からお申込みください。
https://apply.e-tumo.jp/pref-saitama-u/offer/offerDetail_initDisplay?tempSeq=62120
申込期間|11月1日(水)~11月17日(金) ※申込みを締切りました。
内容|展覧会を鑑賞し、自分だけの窓を作ります
*1日目に展示室へ入るため、企画展観覧料が必要です
担当学芸員によるギャラリートーク
日時|1月13日(土)15:00~[30分程度]
場所|2階企画展示室 *企画展観覧料が必要です
スライドトークのご案内
ご希望のグループにスライドを使って展覧会の見どころをご案内します(予約制)。
お問い合わせ、ご予約は教育・広報担当(問い合わせ先:048-824-0110)まで。
図録販売
展覧会図録は、10月14日(土)より当館ミュージアム・ショップにて販売します。
なお、本展の図録は本体とカバー(会場風景の写真を使用した当図録専用カバー)のセット商品です。
カバーは11月末に納品予定ですので、図録を購入されたお客様には後日カバーを郵送いたします。
※図録本体と専用カバーの個別販売は行いません。
価格:1,100円(税込)
判型:A5変形
頁数:112頁
通信販売については、こちらのページをご確認ください。
報道関係者の方へ
イン・ビトウィーン_プレスリリース.pdf
(English)In Between_Press Release.pdf