企画展 2F New Vision Saitama 3 −7つの眼 × 7つの作法ー

2007.12.26 [水] - 2008.1.27 [日]

埼玉県立近代美術館では、活躍中のアーティストに焦点をあてる企画展「ニュー・ヴィジョン・サイタマ」を、不定期ではありましたが、継続して開催してきました。3回目となる今回の「ニュー・ヴィジョン・サイタマ」では、当館の学芸員7名がそれぞれの観点から、現在、最も注目する埼玉県ゆかりのアーティストを1名ずつ取り上げます。
紹介されるアーティスト7人は世代も異なり、ジャンルも絵画、インスタレーション、デザインなどさまざまです。しかし、彼らの活動に共通して浮かび上がってくるものは、目まぐるしく移り変わる最新の傾向や流行からは一定の距離を置いて、独自のものの見方や手法を探求している点かもしれません。21世紀になり、文化や社会の価値観が分散する一方、アートは一段と大衆化し、本当に拠り所とすべき芸術思潮や方法論がますます見えにくくなってきていると言われています。そういう時代であるからこそ、個々のアーティストが地道に取り組んでいる世界をひとつひとつ読み解いていくことは、新たな時代のアートや文化のあり方を考えていくうえで最も大切なステップになるといえるでしょう。
学芸員の7つの視点とアーティストの7つの表現。オムニバスのような構成を辿りながら、21世紀の埼玉の「アート力」について展望していきます。

出品作家の紹介

古川勝紀(ふるかわ・まさのり)

1953年富山県生まれ。現在、埼玉県東松山市に在住。

●あわただしい日常と隣り合わせにある深淵。ふとしたはずみにおぼろげで不確かな空間から異形のものたちが現れてきます。時の岸辺に曝(さら)され色を失ったものたちが蠢(うごめ)き語り始めます。海の時間、陸(おか)の時間、空の時間・・・。古川勝紀の作品にはそんな気配が感じられます。

(推薦学芸員:中村 誠)

河田政樹(かわだ・まさき)

1973年東京都生まれ。現在、埼玉県ふじみ野市に在住。

●河田政樹さんは、最近、写真と鉢植えの植物などを組み合わせた展示をしています。「これが美術?」と、とまどわれるかもしれません。椅子にすわって、美術について考えるのもいいですが、ただ静かな、気持ちの良い空間にひたるのもおすすめです。

(推薦学芸員:前山 裕司)

織咲 誠(おりさき・まこと)

1965年埼玉県さいたま市生まれ。現在、神奈川県横須賀市に在住。

●織咲誠は、一般的にいうデザイナーとは少し異なっています。自らをインターデザインアーティストと称し、独自の活動をおこなっています。アートと各種デザイン領域を横断し、それを関係づけることによって成立する社会的、環境的な問題を取り込むクリエイティヴな実践をしています。

(推薦学芸員:大久保 静雄)

岡村桂三郎(おかむら・けいざぶろう)

1958年東京都生まれ。現在、埼玉県越生町に在住。

●しいて言えば「日本画」ながら、岡村桂三郎は火を使い刃をふるう、武芸者のような画家です。ぶ厚い杉板の表面をバーナーで燃やし、そこに岩絵具を塗り込めては線を刻むという素材との格闘ののち、宇宙を闊歩する異形の生きものが闇の中に立ち現れてきます。

(推薦学芸員:大越久子)

宮本純夫(みやもと・すみお)

1952年長野県生まれ。1980年から1995年まで埼玉県に住み、現在、長野県中野市に在住。

●宮本純夫さんは、薬剤師として勤務するかたわら、日々制作を行っています。白い布やプリント地全体を染料と脱色剤で画面を構成していくという手法をとっています。オールオーバーな画面からは再生された色、筆触の痕跡などがせめぎあい、あらたな世界が生まれてきます。

(推薦学芸員:伊豆井秀一)

冨井大裕(とみい・もとひろ)

1973年新潟県生まれ。現在、埼玉県越生町に在住。

●画鋲、スーパーボール、スポンジ、色鉛筆…。冨井大裕は、ありふれたものを用いて、はっとするほど新鮮な感覚に満ちた「作品」をつくります。そんな冨井大裕の「作品」は、ありふれた食材で作られた、驚くほどおいしい料理に、少しだけ似ているかもしれません。

(推薦学芸員:梅津 元)

志水児王(しみず・じおう)

1966年東京都生まれ。現在、埼玉県所沢市に在住。

●「どうして金属は光に反射するとギラギラ見えるのだろう?」志水児王は、幼い頃からこんな疑問を抱いてきた美術家です。身近な光や音から何万光年も離れた天体まで、さまざまな物理的な現象に眼を向け、日頃は気付かない自然の仕組みを美しく浮かび上がらせます。

(推薦学芸員:平野 到)

会期

2007.12.26 [水] - 2008.1.14 [月]

休館日

月曜日(ただし、1月14日(月・祝)は開館)、 年末年始:12月29日(土)~1月3日(木)、
メンテナンスによる臨時休館日:1月15日(火)

開館時間

10:00~17:30 (入場は閉館の30分前まで)

観覧料

一般800円(640円)、大高生640円(520円)
※( )内は20名以上の団体料金。
※中学生以下と65歳以上、障害者手帳をお持ちの方(付き添い1名を含む)はいずれも無料です。展覧会入場時に確認いたしますので
・65歳以上の方は、年齢を確認できるもの(運転免許証、健康保険証等)をご持参ください。
・障害者手帳をお持ちの方は、手帳をご持参ください。

主催

埼玉県立近代美術館

助成

財団法人地域創造、芸術文化振興基金

協力

JR東日本大宮支社

古川勝紀《PM4:26 重機》2002年 アクリル、顔料、カンヴァス

河田政樹《観光》2007年 GALLERY CAPTIONでの展示風景(参考図版)

織咲 誠《葉っぱのお金》1999年 葉/みくに龍翔館(福井県坂井市)蔵(参考図版)

岡村桂三郎 左:《一身四頭象》、右:《黄象》2005年 コバヤシ画廊での展示風景 撮影:末正真礼生 岩絵具、板(参考図版)

宮本純夫《作品83》2005年 染料、漂白剤、綿布

冨井大裕《ball sheet ball》2006年 アルミ板、スーパーボール

志水児王《Lighting Models》2001年 3つのバンドパスフィルター ライトプロジェクターなど(参考図版)