生命を持つものたちの胎動の時間や自然の環境の動きは、実際には見ることのできない世界ですが、近代の科学技術の進展の影響を受けて、美術家たちは新しい技法を用いて、不可視の世界を見える形に表現することを 試みるようになりました。実際には動かない作品に動的な感覚を生み出そうとする方法や、作品自体を実際に動かす方法の両方の試みがなされて、今世紀初頭は、美術家たちがそうした表現に熱中した時期でした。
一方、現代美術における時間や動きの表現は、作者だけの問題としてだけではなく、見る側の視覚によっても時間や動きの表現が生じたり、鑑賞者がそれを認識する事によって初めてその表現が成り立つものであるという、作者と鑑賞者との新しい関係を端的に表しました。今回の展示の典型的な例としては、動くものの形そのものをとらえて見せるマレの「飛ぶ鳥」、実際に作品自体を動かしてみせるデュシャンの「ロト・レリーフ」、作者の制作行為の時間そのものが画面の中に具現している白髪一雄や佐藤時啓の作品、鑑賞者自身が作品から様々な時間を感じとることで成り立つ奥山民枝の作品などがあげられます。
今回の常設展示は、《第1部》コレクション名作選では、印象派、エコール・ド・パリ、キュビスム、シュルレアリスムなどの作家の名作を紹介するとともに、その影響を受けた国内作家たちの作品も併せて紹介します。
《時間と動き》の展示は第2部として、国内外の近・現代作家たちによる、時間や動きに関わる表現の様々な技法による作品を取り上げます。
常設展示室 1F 2001 MOMASコレクション 第1期
2001.4.10 [火] - 7.1 [日]
時間と動き
会期
2001.4.10 [火] - 7.1 [日]
観覧料
無料
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白髪一雄《青波》1979年
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野田哲也《日記;1980年7月11日,成田へ》1980年
埼玉県立近代美術館では、2008年度より「常設展」という呼称を「MOMASコレクション」に改めました。当館の常設展では2002年度以降、外部からの借用作品や現存作家のご協力によって、所蔵作品を核としつつも従来の常設展のイメージに捉われない、企画性の高いプログラムを実施してきました。名称変更はこうした意欲的な姿勢を示そうとするものであり、これまで以上に充実した展示の実現を目指しています。
※MOMAS(モマス)は埼玉県立近代美術館(The Museum of Modern Art, Saitama)の略称です。