上田 薫

2020.11.14 [土・県民の日] - 2021.1.11 [月・祝] 
※臨時休館(2020年12月24日〜2021年1月18日)のため、2020.12.23(水)をもって会期を終了しました。

 

 上田薫(1928〜)は、写真を使って対象を精巧に描き出す画家です。殻からつるりと落ちてくる生玉子がリアルに描かれた彼の作品を、美術の教科書で見たことがある方も多いのではないでしょうか。
 東京藝術大学で油彩を学び、主に抽象画を制作していた上田は、1956年に映画ポスターの国際コンクールで国際大賞を受賞したことをきっかけに、グラフィックデザインの世界へ足を踏み入れます。それからしばらく絵画制作からは離れますが、1970年に、対象そのものだけを写実的に描く表現 —本人曰く、制作に行き詰まったときに頭を空っぽにするための「クソリアリズム」— に目覚めます。
 以後、上田は、ときにデザインの世界で学んだことを活かしながら、現実以上にリアルに見える作品を次々と生み出してきました。作品のモティーフの多くは、殻が割られた瞬間の生玉子、スプーンから流れ落ちそうなジャム、水の流れや空など、一瞬で姿を変えるものです。時間と空間とを切り取るその鮮烈な描写は、リアリズム絵画のなかに独自の位置を占めるものとして、高く評価されています。
 本展では、これまでまとまった形で紹介される機会の少なかった上田薫の歩みを、大学卒業後から現在までの作品約80点とともに紹介します。時間の流れ、空間のひろがり、そして何気ない日常を驚きに変える上田流「クソリアリズム」の世界を、ぜひ心ゆくまでお楽しみください。


会期

2020年11月14日(土・県民の日)~2021年1月11日(月・祝)
※臨時休館(2020年12月24日〜2021年1月18日)のため、2020年12月23日(水)をもって、会期を終了しました。

休館日

月曜日(11月23日及び1月11日は開館)及び12月28日(月)~1月5日(火)
臨時休館(2020年12月24日(木)〜2021年1月18日(月))

開館時間

10:00 ~ 17:30 (入場は17:00まで)

観覧料

一般1100円(880円)、大高生880円(710円)
※( ) 内は20名以上の団体料金。

※中学生以下、障害者手帳等をご提示の方 (付き添いの方1名を含む) は無料です。

※併せてMOMASコレクション (1階展示室) もご覧いただけます。

主催

埼玉県立近代美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会

協賛

ライオン、大日本印刷、損保ジャパン、日本テレビ放送網

協力

上田薫

企画協力

名古屋画廊

広報協力

JR東日本大宮支社、FM NACK 5

出品作品数

84点

展示構成

第1章 「リアル」の前史

東京藝術大学卒業制作の《自画像》(1954年)から、初個展で発表した抽象絵画、ポスターコンクール受賞作、自らの表現を模索していた1960年代終わりころまでの作品など、最初期の上田薫の活動を振り返ります。

第2章 スタイルの確立

視覚でとらえたものを「ただひたすらリアルに描く」と決意した上田。対象だけを画面いっぱいに拡大して描く上田流リアリズムの出発点である、1970年代前半までの作品を紹介します。

第3章 「時間」を描く

リアリズム絵画に独自の境地を開いた上田は、多様なモティーフを次々と手がけていきます。1970年代には、溶けかかるアイスクリームやスプーンから滴るジャムなどの動くもの、つまり現象を描くことへと関心が移ります。移ろいゆくものの一瞬の姿をとらえる試みから、代表作の《なま玉子》シリーズが誕生しました。

第4章 「光」を描く

作品に「時間」という要素を取り込むことに成功した上田は、次のモティーフに泡やシャボン玉を選び、被膜に映りこんだ周囲の光景や上田自身の姿を克明に描きました。透過や反射、屈曲といった光の性質への関心は、コップやビン、液体、川の流れといった新たなモティーフにつながっていきます。

第5章 素描と版画

上田は水彩画、パステル画、版画も多く手がけています。油彩との関連を考察しながら、表現に対する上田の意識を探ります。

第6章 そして現在へ

2000年代以降の仕事において、川の流れを描いたオールオーバーの構図は、《Sky》シリーズにおける空や、静物画のように並んだ玉子の殻といった新たな空間表現へと展開します。また本展出品作の中での最新作は、4点の油彩画。小品ですが、作者自身の手や後ろ姿を描いた興味深い作品です。

図録販売

展覧会図録は、ミュージアムショップでの販売のほか、通信販売を受け付けています。
詳細は、こちらをご覧ください。

関連イベント

担当学芸員によるギャラリー・トーク

担当学芸員が展覧会の見どころをご紹介します。

日時:11月29日(日)、12月6日(日)、12月13日(日)
   各日とも11時00分から30分程度
会場:2階展示室
費用:企画展観覧料が必要です。

 拡大版スライド・トーク

スライドを使って展覧会の見どころをご紹介します。

日時:11月22日(日)、12月19日(土)
   各日とも14時00分から30分程度
会場:2階講堂
費用:無料
定員:50席(先着順。開場:13時30分) 

スライド・トーク

上記「拡大版スライド・トーク」とは別に、ご希望のグループにスライドを使って展覧会の見どころをご案内します(予約制)。
お問い合わせ、ご予約は教育・広報担当(問い合わせ先:048-824-0110)まで。



プレス関係者の方へ

上田薫プレスリリース20201023.pdf
(English)PRESS RELEASE(UEDA Kaoru).pdf

 

上田薫展関連映像「上田薫 制作と語り」(2020年春〜夏)


上田薫《スプーンのジャム A》 1974年 油彩・アクリル、キャンバス 東京都現代美術館蔵


上田薫《なま玉子 A》 1975年 油彩・アクリル、キャンバス 群馬県立近代美術館蔵


上田薫《あわ D》 1979年 油彩・アクリル、キャンバス


上田薫《ジェリーにスプーン C》 1990年 油彩、キャンバス 埼玉県立近代美術館蔵


上田薫《サラダ E》 2014年 油彩、キャンバス